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犬に噛まれた!
旅日記第3部 《インド編》
旅を始めて71日目
現在、インドのデリーにいます。


 夜行列車は定刻から30分遅れの午前8時にニューデリー駅に到着した。実は昨日の夜行列車では2つのトラブルがあった。

 一つは、列車がヴァラナシ駅に停車中、寝台車で僕の上の席にいた台湾人がサブバックを盗まれ、携帯電話、デジタルカメラ、キャッシュカードなどの貴重品を失ってしまったことだ。
 インドの列車はスリが多い。とくに駅に停車中は誰でもおかまいなしに車内に入っていくので荷物は肌身離さずに身に付けているか、チェーンキーなどでどこかに結び付けておく必要がある。コルカタで会った日本人パッカーもそれで貴重品を全部失っていた。

 もう一つは、やはりこれもヴァラナシ駅に停車中、連結部分でタバコを吸っていると、ホームから警官が二人やってきて、罰金を請求してきたことだ。

「ここでタバコを吸うのは禁止だ。罰金350ルピー(700円)払え」
「いや、今まで乗っていた列車じゃインド人はみんなここで吸っていたよ」
「それはジェネラルシートだろ。ここは駄目なんだ」
「ノー、ノー、ノー。今そんな金もっていない。払えないよ」
「それならチップを渡せ。それで許してやる」
「いくら払えばいいの?」
「320ルピー(640円)だ」
(ほんのちょっとしか安くなってないじゃん……)

 実はその時、財布の中には本当に15ルピーしか入っていなくて(バックパックには入っていた)、面倒なことになりそうだった。

 で、仕方ないのでどうしたかというと、“逃げた”。
「ノー、ノー、ノー!」と冗談ぽく言いながら強引にポリスを押しのけ、自分の車両とは逆の車両に入っていった。人ごみをかきわけながら早足で反対の出口まで行き、ホームに降りて隠れて様子を伺う。しばらくするとポリスがいなくなったので自分の車両に戻っていった。なんとか大丈夫だったようだ。

 どうせチップ欲しさの取り締まりだろう。取り締まりをしているポリスはそれらの罰金やチップをほとんど自分のポケットに入れているらしい。
 最悪の場合、「チップを要求してきたことをツーリストポリスに伝えるぞ」と脅してディスカウントしてもらおうと思っていたけど、運良く難を逃れることができてよかった。


 列車がヴァラナシ駅に到着すると、盗難にあった台湾人が心配だったので一緒についてポリスに行くことにした。途中まで一緒に行ったのだけれど、台湾人の方が「あとは大丈夫だから」と気を遣ってくれたので、
「それじゃ、何かあったらここに来て、このホテルはスタッフも親切だからいろいろ助けてくれると思うよ」と言って、僕が前に泊まっていた「パヤルホテル」の名刺を渡しておいた。


「パヤルホテル」に着くと、前にすごくお世話になったオーナーのディーパックさんがフランスに出張中で不在とのことだった。またビールをおごってもらおうと思っていたので残念だ。
 とりあえずシャワーを浴びてひと休みし、久し振りのデリーの町を散歩することにした。

 前来た時によく歩いていた通りを歩いていると、最初に通った時のことを思い出して懐かしくなる。商店には何人か見覚えのあるおっさんもいた。観光客があまりこない時期なので、客引きのほうは迫力に欠けるけれど、それでもあのときと同じデリーの町だった。

 20分ほど歩き、そろそろホテルに戻ろうかと道を引き返した時、突然目の前に3匹の犬が現れた。周りにはインド人が何人かいるのに、なぜか僕の前にきれいに並んで激しく吼えまくっている。これはマズイ……。
 あわてて後ずさりし、前から飛びかかられるのを警戒していたら、突然背後に激痛がはしった。

 痛ってぇ!!!

 4匹目の犬が後ろにいて、僕の右臀部を思いっきり噛み付きやがった。

 うわっ、やられた!!!

 ショルダーバックをふりまわし、前の3匹の犬も噛み付いた犬も逃げていったけれど、しっかりお尻を噛まれてしまった。

 慌ててホテルに帰りパンツを脱いでみると、しっかり歯型が残り、2箇所から出血していた。以前、同じように犬に噛まれた旅人から応急処置の方法を聞いていたので、急いで石鹸を取り出し、患部をゴシゴシ洗う。
 そのあとでレセプションに降りてスタッフに犬に噛まれたことを話し、ワクチンのある病院を紹介してもらった。

 狂犬病は犬に噛まれたあと、6回のワクチンを接種しなければならない。感染すれば致死率は100パーセント。日本人で狂犬病になった人はほとんどいないが、インドでは1年間に3万人が狂犬病で死んでいるらしい。
 狂犬病の犬は皮膚病のように皮膚がまだらになり、目つきが危なく、ヨダレをたらしているという。幸い僕を噛み付きやがった犬は普通の犬だったけれど、その犬が今はまだ狂犬病の潜伏期間だという恐れもある。

 命にはかえられない。すぐに病院にいって患部を消毒してもらい、両腕に1本ずつワクチンを打ってもらった。
 1回目は噛まれた当日、2回目は3日後、3回目は7日後、4回目は14日後、5回目は30日後、6回目は90日後。このさき5回の注射が必要だ。うーん、面倒くさい。

 せっかくビールの安いデリーに来たので今日は浴びるほどビールを飲んでやろうと思っていたのに、今日は飲酒禁止と医師に言われてしまった。
 なんてこったい。これまでほぼ順調に旅を続けてきたのに、飛行機に乗るためだけにやってきたデリーで最後の最後に落とし穴があるなんて……。

 盗難にあった台湾人があとでホテルまでやってきたが、彼にまでひどく心配されてしまった。1時間前までは「ついてない人だなあ」とこちらが同情していたのに……。
 でも注射を打てば問題はないらしいからご安心を。噛まれた傷はたいしたことないので、普通に生活しています。

 でもむかつくなあ。
 まさかインドに来て、インド人にむかつかず、インドの犬にむかつくことになるとは……。
author:tiger, category:インド編, 11:58
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