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四川大地震から丸一年
旅日記第3部 《インド編》
旅を始めて68日目
現在、インドのヴァラナシにいます。


 ちょうど1年前の今日、2008年5月12日に四川省を襲った震度8・0の大地震は世界中に衝撃を与えた。死者7万人、負傷者37万人、行方不明者1万8千人。これは日本で12年前に起きた阪神淡路大震災のおよそ10倍の被害になる。


  実は僕自身、去年1年間は中国の北京に滞在しており、ちょうどその時は四川省を旅していて、成都付近でこの地震に遭遇した。
 僕が地震に遭遇したのは成都から重慶に向かうバスの車内だった。幸いなことに、僕自身は地震による被害はまったくなく、バスもそのまま重慶にたどり着いた。
 事の重大さを認識したのは地震後の友人からのメールやその後のニュースからだった。

 震源地の汶川付近も九寨沟から成都に戻るために3日前にバスで通過している。同じ道を車で通った人のなかには落石により命を落とした人もいたらしい。
 僕は本当に運がよかったと思う。でも、震災直後は自分の幸運を喜ぶという気持ちにはなれなかった。

 自分のすぐ近くには瓦礫に埋もれ、生死をさまよっている人たちがたくさんいる。余震の恐怖に怯え、家にも帰れずに野宿をしている人たちがたくさんいる。実際に成都で前日に会った中国人の友達からは地震後も何度もメールが入った。

「怖い。どうして私はこんな辛い目に遭わなければいけないの?」

「夜中の3時にグラウンドに集合させられた。先生は私たちを怒鳴っている。みんな恐怖に震えている」

「また余震があった。私は地震がきたらどうしたらいいの? お願い、教えて!」

 現地にはこのように恐怖に震えている人たちがたくさんいる。震源地では瓦礫の下で助けを求めている人たちがたくさんいる。


 地震の3日後、僕は震災地にもかかわらず僕を見送りにきてくれた重慶の友達にお別れを言い、北京行きの列車に乗りこんだ。
 北京に着くまでの41時間、僕は「震災地から逃げ出した」という気持ちで自己嫌悪になった。
 僕は震災地から安全な北京に逃げた。結局僕は何もすることができなかった。。。


 今回の四川大地震で学んだことは本当に大きかった。中でも一番印象的だったのは「中国人の優しさ」だった。

 僕が四川を旅していることを知っている友達は、震災があった直後から何度も繋がらない電話をかけ、何度もメールを送って僕の無事を確認してくれた。
 本当にたくさんの中国人の友達が日本人の僕を心配してくれた。それまであまり連絡をとっていなかった友達からもたくさんメールがきた。

「早く北京に帰ってきて。北京には友達がたくさんいるよ」

 本当に嬉しくて涙が出た。
 成都や重慶で余震の恐怖に震えている友達までもが、僕が無事に北京に帰れたかを心配してメールをくれた。

「私はもう大丈夫。それよりあなたは自分のことを心配して」

 僕が同じ立場だったら、自分のことで精一杯で震源地を離れていく人間のことなど気にする余裕などなかったと思う。


 僕の通う清華大学では、深夜1時まで募金や献血をしたいという人の列が続いたという。なんとかして苦しんでいる人たちの力になりたいという思いが伝わってくる。中には8時間も待って献血したという人もいるらしい。
 これは清華大学に限ったことではない。中国全土でこのような人たちが震災地で苦しんでいる人たちのために自分のできることをしようとしているのだ。貧乏な人も自分の出せるだけのお金や衣服、日用品などを差し出していた。

 中国は本当に素晴らしい国だと思う。中国人の友達からこのようなメールが何通も届いた。

「日本は私たちのために救援部隊を最初に送ってくれました。本当にありがとう」


 現在、日本と中国の仲はあまりいいとはいえない。反日感情、反中感情を持つ人も多いらしい。
 僕は国と国の問題はあっても、人と人の関係にそれらは関係ないと思っている。
 中国の政治が悪くても、中国人はみな悪い奴というわけではない。それは日本人でも同じことが言えると思う。

 困っている人がいる。生死をさまよっている人たちがいる。同じ人間なんだから、それを助けたいと思う気持ちに国と国のもめごとは関係ない。
 日本が中国に対してすぐに援助部隊を送ったことは嬉しかったし、中国人がそれを素直に喜び、感謝してくれたことも本当に嬉しかった。

 あの大地震を僕は絶対に忘れない。人間の命のはかなさも、中国人の優しさも、人間としてしなければならないことも。


 地震から今日で丸一年。インドに滞在しながら1年前を思い出し、ガンジスに向かって黙祷した。今も震災地で苦しんでいる人がたくさんいる。一刻も早く元の生活を取り戻してほしい。


 最後に、四川大地震で亡くなった多くの方のご冥福をお祈りします。






 
author:tiger, category:インド編, 16:02
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