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タイに来たからにはムエタイ観戦!
日本を出発してから348日目
ただいま39カ国目
タイのバンコクにいます


 1月2日。この日は毎年、日本で箱根駅伝を見ていたのだけれど、今年はついにオンタイムで見ることができなかった。
 僕は本当に箱根駅伝が好きで、毎年、関東インカレ、日本インカレをチェックし、出雲駅伝、全日本大学駅伝の結果から区間配置を考え、「箱根駅伝公式ガイドブック」を購入して、本戦はビデオまで撮って繰り返し見ている。
 今年はいったいどこの大学が往路を制したのだろう。今井の抜けた順天堂は戦力補強に成功したのか、山梨学院のモグスは2区の区間記録をぬりかえるのか、佐藤・伊達の2枚看板をようする東海大は彼らをどの区間に配置するのか。見所満載でかなり気になる。帰ってビデオを見るのが楽しみだ。

 そういえば、ボリビアのウユニを一緒にまわったパッカーで異常にスポーツに詳しいMさんという女性がいた。彼女はスポーツのなかでも特に陸上長距離が好きで、去年は中国の昆明まで行って日本女子長距離選手の高地トレーニングを見学したという。
 すごい力のはいりようだ。きっと今日はテレビにくぎづけになっていただろう。いや、彼女のことだから沿道に応援にいっているかもしれない。帰国したら酒を飲みながら箱根談義に花を咲かせたいところだ。


 駅伝ランナーが頑張っているのに、自分だけバンコクでのんびりしているわけにはいかないだろう。そう思って、今日は夕方からムエタイを見にいってきた。

 タイといえばムエタイ。スポーツは好きなのでムエタイがどういうものか少しは知っているが、実際にこの目で見るのはこれが初めて。バンコクには有名なムエタイのスタジアムが2つあるらしいが、今回はそのうちのひとつ、「Rajadamnern Stadium」(ラジャダムナンスタジアム)に行ってみることにした。

 ムエタイはもともと素手で相手を倒す軍用格闘技として生まれたらしく、400年以上の歴史をもっている。攻撃はパンチ、蹴り、膝蹴り、肘打ちなどが認められていて、日本で行われているK−1などとくらべてもルール規制の少ない危険な格闘技だ。
 ムエタイの「ムエ」とは格闘技という意味で、「タイの格闘技」ということで日本人は「ムエタイ」と呼んでいるようだが、現地人はムエタイとは言わずに、「ムエ」とか「ムワイ」とか呼んでいる。


 スタジアムまではカオサンからトゥクトゥクで10分ほど。チケットは3種類あって、前のほうの席から2000バーツ(6000円)、1500バーツ(4500円)、1000バーツ(3000円)となっている。
 はっきりいってこの値段は高い。現地人は現地人料金で入っているけれど、外国人からはたんまり取ろうというわけだ。
 それでもせっかくなので前の方で見てもいいかなと思ったのだけれど、トオルさんに話を聞くと「前より後ろのほうが面白いよ」と言っていたので、今回は1000バーツの席で見ることにした。

 会場のキャパや雰囲気は後楽園ホールに似た感じだろうか。完全に円形のスタジアムで椅子席ではなくコンクリートの段になっている。正面スタンドを中心に客が入っていたが、試合開始の18時ちょうどくらいに会場入りしたときは、ほとんど客はいなかった。




 渡されたプログラムを見ると、全部で10試合組まれていたのだけれど、初めに行われた試合はムエタイではなくボクシングだった。
 あまり盛り上がりもないままに2試合が終わり、ムエタイはいつ始まるのかと思っていたら、ようやくそれらしい音楽が流れてきた。コスチュームに身をつつんだ選手が赤コーナー、青コーナーから入場してくる。

 音楽に合わせて入場してきた選手は頭にモンコンという輪っかをはめ、上腕にはパープラチアットという紐を結んでいる。手にはグローブ、ムエタイパンツをはいて、足は素足だ。無駄な肉はまったくなく、鍛え上げられた肉体をしている。
 リング上にあがるとお決まりの踊りが始まる。この踊りはワイクルーといい、今までお世話になった人や神様に捧げるお祈りらしいが、腕を顔の前でまわしながら両膝を交互にあげてリングのまわりを周回し、そのあとリング中央に片膝をついてさらにお祈りをする。これが3分から5分くらいつづく。
 リング上の選手が音楽の流れるなかお祈りしているのを見ていると、

 おおっ、これぞムエタイ! 

 という感じでうれしくなってきた。




 お祈りが終わるといよいよ試合が始まった。体重が50キロもない少年2人がリング上で向かい合い、最初のうちは様子うかがい。互いにけん制しながら前蹴りをいれていく。
 しばらくすると首相撲の形になって、互いのリバーに膝蹴りをたたきこんでいく。




 試合は3分5ラウンド制でインターバルは2分。KOかポイント制で勝敗が決まるらしいのだが、ポイントについては見ていてもあまりよくわからなかった。
 ラウンドが進むにつれて打撃は勢いをましてくる。最後のほうは喧嘩みたいになって、お互いもみあいながら倒れることが多くなった。
 にしても、ラウンド終盤になってもいっこうに手数が減らない。いい加減疲れているだろうに、果敢に相手に向かっていく。よっぽど鍛えられているのだろう。
 結局この試合はポイント判定で勝負が決した。

 つづいて第二試合、第三試合とつづくにつれて選手のレベルも上がっていった。会場の観客も増え、スタジアム全体が熱気をおびてくる。
 KOで決まる試合は少なく、あまり格闘技に興味のない人は物足りなく感じるかもしれないけれど、これはこれで面白い。いくらやられていても最後まで選手が頑張って反撃しようとするので、応援したくなってしまう。
 日本の素人格闘家がたいした訓練もしないでリングにあがり、大金を払ってチケット入手した観客にしょっぱい泥仕合を見せていることを考えればよっぽどマシだ。








 試合も第四試合、第五試合くらいになると、僕のいる後部シートのほうがより熱気を帯びてきた。というのは、タイのムエタイでは観客が試合の勝敗をめぐってギャンブルをしているからだ。
 普通のかっこうをしたオッサンが試合の中盤くらいから、片手を上にあげてその手首を振りながらタイ語で観客をあおりたてている。こういう輩が何人もいる。それに呼応する賭け手。全部身振りと口答で取引が行われているので、どうやって賭けているか全くわからないが、みな予想紙を手にし(競馬新聞みたいなもの)、試合よりも賭けで盛り上がっているかんじだった。
 その盛り上がりにはタイらしさ、タイ臭さが感じられて面白かった。選手が一つ蹴りを入れるたびに、その選手に張った観客から掛け声がかかる。ドーム型のスタジアムは熱気でムンムンとなり、歓声が会場いっぱいにこだまする。トオルさんが「前より後ろのほうが面白いよ」と言っていたのはこのことなんだろう。


このあたりの席が一番盛り上がっていた。


手をあげているのが胴元。

 僕も賭けに参加してみたかったのだけれど、あいにくタイ語はまったくわからない。掛け金も見ていると1000バーツ札(3000円)が飛び交っていたので、結構でかい金額で行われているようだ。
 知っている人と一緒にこないと賭けに参加するのは難しいだろう。

 試合結果は試合の途中でもポイント差でわかるらしい。接戦のときは試合の最後まで盛り上がっているが、一方的な試合では選手はまだ闘っているというのに途中でお金の受け渡しが始まってしまう。今まで立ちあがって試合を見ていた観客も、みな座りこんだりトイレにいっていなくなってしまう。
 これもタイの文化なのかもしれないが、これでは選手がかわいそうだと思った。

 しだいにテンションがあがっていき、1番盛り上がったのは第七試合だった。
 選手のレベルもあがってきて、パチンパチンという鋭い蹴りの音が僕らの席まで聞こえてくる。一打一打に観衆の掛け声が飛び、轟音となってスタジアム中に響いていた。かなりの金額が選手に張られているようだ。
 にしても、ムエタイ選手はすごい。KOこそ少ないものの、そのタフさには感心してしまう。タイのボクサーがKO負けが少ないというのもうなずける。(亀田の相手は違うけど)




 が、第七試合が終わったと同時に、多くの観客が席を立ってしまった。たしかまだプログラムでは3試合残っているはずなのに。
 たぶん、第七試合が今日のメインだったんだろう。競馬でいう11レースのようなものかもしれない。残りの試合でも賭けは行われているようだったが、ごく少数。リングサイドで賭けに参加していない人はほとんど残っていたが観客は半分以下に減り、会場のボルテージはすかっり下がってしまった。

 僕も第九試合の途中でスタジアムをあとにした。18時に始まった試合もすでに22時半。23時からは今日でお別れになるトオルさんとM子ちゃんと晩飯を食うことになっていたからだ。


 タイのムエタイにとって、賭けはなくてはならないものなのだろう。賭けを中心にまわっているので金も動き、会場に足を運ぶ観客も増える。八百長試合も多いと聞くが、それとは別にムエタイ選手のポテンシャルは高いと思った。
 今日はどちらかというと賭けをする会場の雰囲気を味わったかんじだったけれど、またムエタイに来る機会があれば、今度はリングサイドで見てみたい。間近でバチンバチンやる選手の攻防を楽しんでみたいからだ。


 晩飯は今日もカオサンの一本裏通りの屋台にいって現地料理を堪能した。すでに夕飯はすませたというのにトオルさんは本当によく食べていた。
 彼ら2人は明日からカンボジアに向かうそうだ。ケニアで出会い、タイで再会。次はどこで会うのだろうか。日本で偶然ばったりというのはほぼありえないので、会うとしたらまた海外だろう。
 次に会うとき、2人がまだ一緒かどうかはわからないけれど、とりあえず身体には気をつけて。無事に日本に帰国できることを願っています。

 ボンボヤージュ!



屋台のスルメはローラーでのばして売っていた。

author:tiger, category:Thailand, 18:24
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