日本を出発してから280日目
ただいま30カ国目
タンザニアのパジェにいます
今日はストーンタウンからパジェに移動した。移動は民間のバスを利用したが、こちらではそのバスを「ダラダラ」と呼ぶ。
途中で道行く人を乗せながら走るオンボロバスなので、なかなかグッドなネーミングだ。
道端で遊ぶ子供たち
パジェまでは1500シリング(150円)。2時間ほどかかり、運転手に言われた場所で降りたのだけど、建物も何もない道端で降ろされたので、どこに行っていいのかわからない。
困っていると、ちょうど自転車に乗った少年が現れたので聞いてみた。
「パラダイス・ビーチ・バンガロー」
「パラダイス・ビーチ・バンガロー? さおり?」
「イエス、イエス!」
「パラダイス・ビーチ・バンガロー」とは日本人の女性が経営している現地の宿で、その存在は旅人から聞いて知っていた。「サオリ」というのはたぶんそこのオーナーの三浦さんのことだろう。
この宿は歩き方にも載っていたのだけれど、値段がちょっとはるので宿泊するか悩んでいた。まだどうするか決めかねていたけれど、とりあえずそこに行っていろいろ聞いてみることにした。
少年は自転車を降りて、僕を宿まで案内してくれた。歩いて15分。バックパックを持っているのでこの蒸し暑い中を歩くのはけっこう辛い。
少年は宿の前まで案内してくれた。宿のスタッフを見つけると、「ここだよ」と言って帰ろうとする。チップを要求してくることはしない。貧しいはずなのになんて親切なんだ。嬉しくなったので200シリング(20円)だけ渡しておいた。
宿につくと、オーナーのサオリさんが笑顔で迎えてくれた。タンザニアに来てはじめて会う日本人に安堵感は増す。宿泊料を聞くと、一番安いバンガローで一泊25ドルだという。話を聞くと、ここパジェの宿泊施設は観光客相手のリゾート宿なので、だいたい30ドルから40ドルはするという。
自分が貧乏パッカーで、あまり高いところには泊れないことを話すと、ここで働いている現地人のスタッフリーダーと交渉してくれという。25ドルを20ドルにまけてもらい、他を捜すのも面倒くさかったので、とりあえず一泊してみることにした。
このバンガローは「パラダイス・ビーチ・バンガロー」という名にふさわしく、すぐ目の前がビーチ。それもとびきりのビーチだ。宿の造りもとてもオシャレで、まさにパラダイス。本当だったら何泊でもしたい感じだった。
せっかくこんなに綺麗な場所にきたのだから、たまには贅沢してみるのもいいかな? さっきまで値下げ交渉していたくせに、そう思ったとたんにビールを注文してしまっていた。
サオリさんもビールが大好きらしい。ビーチサイドのテーブルで一緒にビールを飲みながら話していたら、すっかり話が盛り上がってしまった。
「もう一本飲む? あなたもビール好きでしょ。今日は私が特別におごりますからつきあって」
そう言われて、断る理由は何もない。仕事柄、年上の人の話を聞くのは得意だ。得意というより、面白い人と話すのが好きなので話が終わらない。サオリさんがタンザニアに来たときの話、現地人とのトラブルの話、趣味の読書の話……。気がつけば、サオリさんにビール3本、それにお刺身までおごってもらっていた。
サオリさんはここに来て、すでに15年たつという。最初はアフリカを旅行するつもりでこの地にも足を運んだのだけれど、すっかりここが気に入って滞在し、宿の経営をはじめたのだという。
宿を造るにあたっては、自分のこだわりが強かったので、いろいろと大変だったらしい。現地人との文化の違いや、そこからくるトラブルもしょっちゅうあるらしいが、持ち前の負けん気の強さと明るさで乗り越えてきたのだろう。女性一人でたいしたもんだ。
ビーチサイドで話していると、見覚えのある顔がビーチから歩いてきた。よく見ると、イスラエルで同じ宿だったN君とY君ではないか。約2ヶ月ぶりの偶然の再会だ。
彼らも偶然、ケニアのナイロビで会って、ここまで一緒に来たのだという。ナイロビから一緒に来たメンバーにはもうひとりT君もいて、急に日本人だらけになってしまった。
夕食はせっかくなので、ちょっと値のはる宿の日本食を注文した。8000シリング(800円)はかなり贅沢だが、もう今日は贅沢すると決めたのでいいだろう。メニューは焼き魚に味噌汁に漬物。ご飯を4杯もおかわりして、大満足の夕飯だった。
実はもうひとつ、サオリさんには感謝しなければならないことがある。タンザニアにはもう一人、現地に10年以上滞在して、現地人に農業を教えている日本人がいるらしい。
これは面白い。僕がその人にとても興味があると言ったら、サオリさんはすぐに電話でその人を紹介してくれた。話はとんとん拍子に進む。その人とは1日に空港で待ち合わせ、そこから一緒にその人の村に行くことになった。なんてラッキーなんだ。
タンザニアの興味はつきない。これからどんなものが僕を待ち受けているのだろうか。