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もうひとつの観光のかたち
日本を出発してから262日目
ただいま26カ国目
オーストリアのウィーンにいます


 今日は一日「公園デー」。緑の中でのんびり過ごした。
 公園は好きで、日本にいるときもよくいっている。特になにをするでもなく、家族づれや子供たちが遊んでいるのを見ているだけなのだけれど、それがいい。
 ただ、日本の公園はその敷地を精一杯利用して造られた印象もあって、子供から老人まで気軽にくつろげる空間になっているかというと、そうでもない気がする。

 そういう意味でウィーンの公園はいつまでものんびりしていたい空間だった。芝生の上に腰を下ろし、パンを頬張る。牛乳を飲む。それがやたら美味くかんじる。
 湖は葦などが群生してて水鳥などがたくさんいるし、木々も自然に生えている。規則正しく並べられて生えていないので好き勝手な場所を選んで腰を下ろし、湖の周りひとつとってもいくつもの場所を楽しめる。
 公園のまわりにも高層ビルなどが建っていないので、景観をそこなわれることがない。特に二つ目にいったフォルクス公園はベンチが公園を囲むように並べられていて、自分がいいと思った景色を見ながらゆったりと腰掛けることができる。
 もっと日本もベンチをたくさん置けばいいのに……。そう感じずにはいられなかった。







 そのうちの一つのベンチに腰掛けると、Nがスケッチブックを出してきた。前に「僕も絵、描いてみたいなあ」。そう言ったのを覚えてくれていたみたいだ。
 Nは今日の夕方の便でフランスに飛んでしまうので、最後にちょっとしたスケッチ大会。写生するのなんていつごろぶりだろう。
 湖のまわりのベンチを選び、下手くそなりに熱中して描いていると、時間のたつのを忘れてしまう。突然、水鳥が大量に陸へあがってきた。何かと思えば、後ろでハトにえさをやっている人がいた。水鳥たちもそれを狙っていたのだ。



 1時間ほどがあっという間にすぎ、下手くそな絵ができあがった。下手くそだけど、描くことが楽しくて仕方なかった。Nはさすがに上手い。同じ風景でこうまで違うかと才能のなさを感じていると、Nが描いた絵をちぎって僕にくれた。
 絵をもらうのって、すごく嬉しい。僕も仕事でイラストレーターから何度かイラストをもらったことがあるが、いつも思う。絵をもらうって、なんでこんなに嬉しいんだろう。
 その答えもわからないまま、僕も思わず自分の描いた下手くそな絵をNにプレゼントしてしまった。いつかまたその絵を見たとき、その下手さかげんで笑いながら僕のことを思い出してくれたらいいのだけれど……。

 その町の名所をまわるのもいいけれど、こういうのって、違った形のすごく贅沢な観光だと思う。景色のいい場所で読書したり、お茶飲んだり、音楽聴いたり。列車に揺られながら物思いにふけったり。そしてやっぱり僕は観光嫌いなのかもしれないなと思ってしまうのだった。



 Nが時間になったので、一度宿までもどり、途中の駅まで送っていった。Nとは6日間一緒だったが、いろいろな影響をくらわせられた。それを僕は「N菌」と名づけている。Nには何でも見透かされてそうで怖い。仕事のこと、旅のこと、これからの生き方のこと。N菌は容赦なく攻めてきて、僕を苦悩させる。
 これまではずっとお気楽旅をつづけてきたのに……。今度日本で再会したとき、Nはどうなっているんだろうか? そして僕は……。N菌はこれからも先もしばらく僕を悩ませそうだ。


街ではこういう姿をよく目にする。やはり音楽の都だ。



 Nを送ったあと、Yちゃんと待ち合わせをして楽友協会にウィーンフィルを聴きにいった。料金は立ち見席で4・5ユーロ(520円)だった。
 ウィーンといえば音楽の都、その本場の演奏には期待していたのだけれど、期待をはるかに上回る演奏に鳥肌が立った。(これは誇張していない。本当に鳥肌が立ったのだ)
 演目もベートーヴェンとシューベルトで知っている曲もあり聴きやすかった。クラシックのコンサートは日本でもよく行くのだけれど、そのレベルの差を感じずにはいられなかった。とにかくすごい。演奏、演奏者、指揮者、演奏会場、すべてに威厳があり、本場のすごさを実感できた。


楽友協会



 帰り道はYちゃんと興奮しっぱなしだった。Nも大のクラシック好きでウィーンフィルは聴きたがっていた。あとちょっとウィーンにいられたらなあ。それだけが心残りだった。

author:tiger, category:Austria, 01:23
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