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シカラ少年との出会い
日本を出発してから215日目
ただいま17カ国目
レバノンのブシャーレにいます


 ブシャーレ2日目。今日は宿で朝食を食べたあと、ブシャーレの渓谷を見に行った。
 見に行ったといっても、下まで降りる元気はなかったので、途中まで。それでも眺めのよい場所で岩の上に座り、1時間ボケーっとしながら自然のなかに身をゆだねた。ここのところ中東を急ぎ足でかけあがってきた。こんなに時間の流れがゆるやかに感じられたのは久しぶりだ。







 正午。昨日の約束を守るべく、ビリヤードバーに足を運ぶ。理多ことリタは僕のくるのを待っていてくれた。美味しいコーヒー入れてもらい、そのあとは昼間からビールを飲む。うーん、なんて贅沢。









 バーのカウンターで話しこんでいると、昨日もいた少年がやってきて、一緒にビリヤードで勝負をしようと言ってきた。向こうは少年2人。2対1で勝負しようというのだ。

 よしきた、受けてたとう!

 周りにいた少年の一人がプレイに参加できず、こちらの応援にまわってくれた。彼もやりたそうだったので途中で一回打たせてあげると、しばらくしてペプシコーラを持ってきてくれた。
 無言で僕の前にペプシの缶を差し出す。

「えっ、これ、もらっていいの?」
「うん」

 まだ10才くらいの少年にジュースをおごられてしまった。
 これは応援してくれているこの少年のためにも、絶対に勝たないといけない。
 気合を入れなおしてプレイを再開したが、相手は少年とはいえかなりやりなれている。きっと、しょっちゅうここに来て遊んでいるんだろう。しかも向こうは2回連続で打てる。こちらは1回、かなり不利だ。
 それでもペプシ少年の応援もあって、なんとか接戦の末、勝負には勝つことができた。
(このへんは実に大人げない。が、そういう性格なので仕方がない)

 ビリヤードの勝負が終わると、一緒に勝負していた少年の一人が自分の家で一緒に昼飯を食わないかと誘ってきてくれた。
 絶対家の人には言っていないはずだ。でも、せっかくなのでおじゃましてみることにした。


手前がシカラ少年。

 彼の名はシカラ。まだ10才の少年だ。彼はビリヤードバーから歩いて5分の自宅に、喜びいさんで僕を案内してくれた。
 最初は緊張したものの、いきなりの東洋人の来訪者にも、彼の家族はとても親切に接してくれた。少年用に用意された昼飯では足りないと思い、すぐに卵料理を作ってくれ、コーヒーまで出してくれた。ほんと、この町の人は親切だ。





 食事のあとは屋上のテラスに上がり、家族といろいろなことを話した。
 日本のこと、僕の旅のこと、ブシャーレのこと……。シカラ少年は自分がつれてきた来訪者を家族に一生懸命に紹介し、家の中を案内してくれた。


テラスから見たブシャーレの町並み


お父さんとツーショット



 1時間半ほどおじゃましたあと、丁寧にお礼を言っていったん宿に戻る。部屋に入ると、見覚えのあるバックパックが横たわっていた。

 あれっ、S君!

 レバノンの南に行くといっていたのに、予定を1日早めてこの町にやってきたらしい。僕がこの町で唯一の日本人かと思っていたら、1日で2人に増えたわけだ。
 一緒に夕飯を食い、町を歩いたあと、さっきのビリヤードバーもう一度遊びにいくことにした。

 店に行くと、日本人が一人増え、さらに注目が集まった。人の輪が2つに増え、相変わらず「漢字で名前を書いてくれ」攻撃が始まる。
 後ろからつつかれて振り返ると、そこにはシカラ少年がいた。再会を喜びあうと、昼間彼の家で撮った写真をその店のパソコンに入れてあげた。
 シカラ少年の号令でみんなが集まり試写会がはじまった。
 彼のどうだと言わんばかりの満足気な顔。たった2日しかいなかったけど、この顔も今日限りかと思うと寂しくなる。

 2時間ほどいて、そろそろ帰ろうかということになり、お世話になったバーの店員や仲間にお別れを言って店をでた。シカラは外まで追いかけてきてくれ僕らの見送りをしてくれた。
 気がつくと目の前を通った車と止め、僕らを宿まで送ってあげてくれと頼んでいる。

「いいよいいよ、近いから。歩いて帰るよ」

 彼の気遣いに感謝し、ほっぺたを合わせて抱擁。お礼とお別れを言ってその場をあとにした。

 宿への坂をのぼっていると、後ろから声がする。振り返ると、シカラ少年が追いかけてきた。何かあったのかと待っていると、彼は僕の前に立ち、目の前にライターをひとつ差し出した。
 
「危ないからコレ使って!」

 よく見るとそのライターはお尻の部分から光が出るようになっている。それで暗い夜道を照らしていけと言っているらしかった。
 うそ! 10才の少年がここまでやってくれるのか。
 彼の気遣いを心の奥底まで感じ、もう一度抱擁してサヨナラを言った。

 帰り道、シカラ少年にもらったライターで道を照らしながら歩いていると、自然に涙が出そうになった。S君にバレないように無言で歩く。
 この町との出会い、あの店との出会い、シカラ少年との出会い。すべてが僕にとってあまりにも大きすぎる思い出だ。

 もう一日ここに居ようかな……。
 そう思ったけれど、これで出発したほうがいいなとも思った。あと何日いてもたぶん同じ気持ちになるだろうから。

 
 


 
author:tiger, category:Lebanon, 09:39
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