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ブシャーレという町を知っていますか?
日本を出発してから214日目
ただいま17カ国目
レバノンのブシャーレにいます


 今日はベイルートを出て、まずは北の町トリポリに向かった。S君とリーと一緒に出かけたのだが、2人は観光を終えたらベイルートに帰る。僕だけ次の町ブシャーレに移動するので、一人バックパックを持っての移動となった。

 トリポリに着き、バスターミナルかインフォメーションで荷物を預かってもらおうと思っていたのだが、レバノンはテロがあるため、簡単に荷物をあずかってもらえない(爆弾とか入ってるおそれがあるので)。仕方なくキャスターをだして、ひっぱりながら観光することにした。
 道がわからず困っていると、一人のレバノン人が親切に道を教えてくれた(この人とは後に再会する)。
 とりあえず有名とされているモスクに行ったのだけど、あいにくの工事中。スークをまわり、町をぶらついてみたのだけれど、特に見所もないので、1時間半ほどで移動することになった。












トリポリの町並みと子供たち。

 S君とはこれまで1ヶ月以上一緒にいたので、久しぶりに別れることになる。1人になるのも久しぶりなので多少の緊張感もあったのだが、逆に新鮮でもあり、次の町ブシャーレに期待を寄せながらバスに乗り込んだ。

 トリポリからブシャーレまではバスで1時間。Mちゃんに紹介してもらった宿の名刺をてがかりに道を聞いていくと、お目当ての宿「タイガーハウス」に到着した。
 宿に入ると、大柄な男性がこちらの顔を見て驚いている。

<あれっ、なんか見たことある気がする>

 驚いたことに、トリポリで道がわからず親切に説明してくれたレバノン人、彼こそがここの宿主トニーであった。今日の午前中、用があってトリポリに来ていたのだという。
 なんという偶然。この宿とは運命的なつながりがあるのかもしれない。

 とりあえず荷物を置き、「たぶん1泊で次の目的地に行くと思う」とトニーに告げた。
 というわけで、今日中にレバノン杉を見にいかなければならない。トニーに行き方を聞くと、10ドルでタクシーを貸し切れ、レバノン杉で1時間待っていてくれるという。10ドルは高いが他に宿泊客もおらず、時間もないのでお願いすることにした。

 タクシーで山道を登ること15分。町のを見下ろす位置にめざすレバノン杉はあった。レバノン杉はレバノンの象徴として国旗にもその絵がほどこされている。
 昔はこの町もレバノン杉に覆われていたのだが、たびかさなる内戦の影響でその総数は3000本にまで減少してしまったらしい。
 
 レバノン杉は日本の杉とは違って、枝がまるでまつ毛のように上向きにそりかえって伸びている。。
 一人で杉並木の中を歩いていると、ここが中東かと思えないほどの静けさと優しさを感じてしまう。あたたかいのだけれど暑いのではない。どちらかというと優しく包み込む感じのあたたかさだ。
 そのなかで空気を吸っていると身体にパワーをもらっている気がしてくる。内戦ですっかり減少してしまったレバノン杉だけれど、これがまた再び国中を覆うようになった時、レバノンに本当の平和が訪れるのではないかだろうか。国の象徴、国旗に飾られたレバノン杉をレバノン人はこれから大切にしてほしい。









 50分ほどで杉林を抜け、タクシーの運転手のもとに戻ったのだが、ちょっと土産物屋を見たくなり、もう15分ほど待ってもらうことにした。
 土産物屋で絵葉書を見ていると、優しそうな店のお姉さんが話しかけてきた。

「どれがいいの? 3枚で1ドルよ」
「この1枚だけ欲しいんだけど、いい?」
「うん、いいわ。この1枚はあなたにプレゼントする」

 ええっ、いいの!? なんていい人なんだろう。しかも美人。思わず軽くホレてしまいそうになった。

 町でも何人かのレバノン女性にあったのだが、レバノンはムスリムではないので、女性は肌を隠すこともなく普通の格好で生活している。
 顔立ちはヨーロッパ系なのだが、欧米人特有の少し冷たい視線が全く感じられない。みな優しい目をしている。これはアジアの地が混じっているからなのだろうか。
 スタイルもよく、みんな美人。そのくせ気さくな人が多いからすっかりレバノン人女性を気に入ってしまった。

 このあと行った土産物屋でもおじさんが絵葉書を1枚タダでくれた。僕は女性ではない。女の子に優しい現地人は何人かあってきたけれど、ここまでよくされたのは久しぶりだ。
 帰りのタクシーでは運転手がちょっと待っててくれと言って家に立ち寄り、お土産にリンゴを3個くれた。こんなことが中東であるなんて……。
 レバノン人って優しいなあ。しみじみとそう感じながら、すっかり気分をよくして宿に帰った。


運転手の家で栽培しているリンゴ。

 夕方にはメシ食いがてら、町を探索してみることにした。途中、商店のオヤジと気があって30分以上話をし、ネット屋に忘れた買い物袋を店員がわざわざ追いかけて渡しにきてくれた。さらにレバノン株急上昇だ。









 夜中にいったビリヤードとインターネットのあるバーでは多くのレバノン人に囲まれ、すっかり人気者になってしまった。

「日本語で自分の名前を書いてくれ」
「日本の歌を歌ってくれ」
「空手はやるのかい?」

 よほど日本人がめずらしのだろう。この小さい町に今いる日本人はたぶん僕一人。ちょっとした有名人だ。
 いつの間にか輪が広がり、後ろで次の順番をまっているのもいる。そのまた後ろのほうには、何か話したいけど入っていけない子供たちが何か話したそうな感じでこっちに視線を送っていた。







 仲良くなったバーの店員リタ(日本名は「理多」にした)が、いつまでここにいるのか聞いてきた。

「たぶん明日移動する」
「ええっ! もうちょっといてよ。明日の12時にここに来て。おいしいコーヒーをご馳走するから」

「……うん、わかった。明日もこの町にいるよ」

 というわけで、すっかり気に入ってしまったこの町にもう1日いることにしてしまった。
 12時半に宿に帰ると、トニーの奥さんが僕の帰りを待っていてくれた。
 テレビを見ると緊急ニュースでテロの映像が流れている。どこかの街の中心地で爆発が起こり、炎とともに黒ずんだ白煙が上空にわきあがっている。

「えっ、これ、レバノン!?」
「そうよ」
「ちょ、ちょっと待って!」

 慌てて地図を取り出し、場所を聞くと、テロのあったのはここからさほど離れていない北の国境付近の町だという。

「だ、大丈夫なの?」
「心配しなくてもいいのよ。こちらとは関係ないわ」

 でも……。
 こんな平和な町のすぐそばではテロが起こり、人命が失われているのだ。どうしてこんなことが起こるのだろう。ここにいるレバノン人はみんなこんなにいい人なのに……。
 ちょっと複雑な気持ちになりながら、でもこの町にこれた喜びをかみしめながら、もう一泊させてくれとお願いして眠りについた。


トニーの姪っ子。これで13歳。

 

 
 
author:tiger, category:Lebanon, 07:35
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