RSS | ATOM | SEARCH
砂漠で水を飲みたくなった
日本を出発してから147日目
ただいま12カ国目
モロッコのメルズーガにいます


 今日は早朝5時に目が覚めた。夜中、けっこう風が吹いていたらしく、頭から耳から鼻から、身体中のいたるところが砂まみれだ。
 顔を洗う水もないので、とりあえず砂まみれの顔をタオルでぬぐう。小高い丘まで登って砂漠の朝陽を見たあとは、軽い朝食を食べて移動した。
Aちゃんだけ1泊ツアーで先に宿に帰っていったので、メンバーは4人。今日は丸一日砂漠にいることになる。








 
 出発したのは午前7時だったけれど、もうすでに暑かった。砂漠は早朝と夕方からしか動けないから、のんびり寝ていることもできない(どうせ昼寝するからいいのだけれど)。
 今日は昨日よりもさらに「砂漠」という場所を歩いて移動した。まわりは砂しかない。とりあえずガイドのオヤジが道に迷ったら僕らは死ぬだろう。
日ざしもだんだん強くなる。もう、「暑い」というより「熱い」かんじだ。
 喉は渇くわ、ラクダに乗りすぎでお尻が痛いわで、いい加減まいっていたら、ようやく目的地の黒い砂漠(ブラックデザート)が見える場所に出た。
ここはアルジェリアとの国境付近の場所らしい。地面は砂地というより砂利地で、草木も遠くのほうに見ることができる。時間は午前9時半。まだ早いけど、今日の予定はそこでひたすらのんびりするだけらしい。砂漠での生活になるとそれも仕方ないのだろう。
 ブラックデザートには行かないのかとガイドのオヤジに尋ねると、
「アルジェリア、マフィア、ヤクザ、危なーい」
 と言っていた。国境付近は危険ということだろうか。



 ここは簡単な土壁の建物があるのだけれど、そのなかに入っていても暑くて仕方がない。暑くて昼寝することもできないので、ヒロシ君とNちゃんと一緒にトランプで大富豪をして遊ぶことにした。砂漠の真ん中で大富豪をするというのもなかなか痛快だ。最初は神経衰弱をやっていたのだけれど、暑さで頭がまわらないのですぐにやめてしまった。
 でも、久しぶりの大富豪はかなり面白かった(一番面白かったのは、トランプの罰ゲームでNちゃんが「もののけ姫」のモノマネをしたときだったけど……)。

 夕方にはみんなで近くに水汲みに行った。どこに井戸があるのだろうと思っていたら、砂漠の真ん中にタイヤがひとつ置いてある。よくみると、その穴が井戸につながっていた。蓋などない。タイヤひとつが唯一の目印だ。
 井戸はそんなに深くなかった。それなのに水が冷たい。僕の実家も井戸だったけれど、夏は水が冷たくて冬は水が温かかった(何かでその理由を読んだことがあったのだけれど、すっかり忘れてしまった)。
 ガイドのオヤジに頭から水を掛けられる。気持ちよすぎる。それまでの疲れが一気にふっとんだ。水って偉大だなあ。


これが井戸。

 水が偉大だといえば、今日は僕にとって、ちょっとした事件があった。
 実は僕、結構かわっていて、水が飲めない。18歳のときに東京に上京して水道水を飲んだのがきっかけで、水が飲めなくなってしまったのだ。
 あの塩素くささは衝撃だった。実家の井戸水が美味かったからというのもあるかもしれないけれど、それっきり、水はミネラルウォーターでさえ飲めなくなってしまったのだ。もうかれこれ12年くらいになる。たぶん水を単体で飲むことは1年にコップ1杯も飲んでいないはずだ。
 飲めないといっても、ウイスキーの水割りなんかは飲めるし、何かの味がついていれば大丈夫。でも、それが旅に出たわけだから大変だった。
 水の飲めない旅人なんて聞いたことがない。日本にいるときはお茶を飲んでいたので、さほど困ることもなかったのだけれど、アジアや先進国は別にして、海外ではほとんどの国でペットボトルのお茶など売っていない。あるのはコーラやスプライトの炭酸水ばかりだ。このたぐいは嫌いではないのだけれど、お金もかかるし、糖分が多いので飲むと逆に喉が渇く。
 時間に余裕のあるときはお湯を沸かしてTパックで紅茶やマテ茶を作り、冷ましてペットボトルに入れて持ち歩いていた。最近はそれも面倒くさくなって、ミネラルウォーターを買ってきて、少量の果実ジュースで割るようにしている。これだと費用の節約にもなるし、水で薄めてあるので喉もあまり渇かない(果実ジュースと水の割合は1対4くらい)。
 
 話が長くなってしまったけれど、要は、そんな僕が砂漠で水を飲みたくなってしまったのだ。これは普通の人から見ると普通のことだと思うだろうけど、僕にとってみればかなりの衝撃だった。なにせこの12年間、一度も水を飲みたいと思ったことがないのだから。

 で、どうしたかというと、やっぱり水は飲まなかった。飲んでもよかったのだけれど、何となくその機を逃してしまった。これでこの先もしばらくは水を飲むことがないと思う。今思うと、もったいないことをしたなあという気がする。




ヒロシ君とヒロシ君似のラクダ。

 今日の夕食はモロッコ料理のクスクスだった。腹を満たし、気温も下がってきたところで、今日も気持ちよく満天の星空のなかで就寝した。昨夜は砂まみれになったけれど、今日もやっぱり外で寝ることにした。この星空の中で眠るという最高の贅沢を、砂をかぶるなんていうちっぽけなことを理由に放棄するなんてとてもじゃないけどできなかったからだ。


モロッコ料理、クスクス。


ガイドのオヤジは変な人。
author:tiger, category:Morocco, 21:44
-, -, - -