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山田と再会、山田さんと初会
日本を出発してから12日目
ただいま2カ国目
アルゼンチンのブエノスアイレスにいます


 旅を始めて12日目、今日は10日前に別れた山田とここブエノスアイレスで合流する。

 パタゴニアに向かい、最初はその素晴らしさに喜びのメールをよこしていた山田だが、昨日は移動に疲れ果てたメールが送られていた。どんな顔でやってくるか楽しみだ。

 待ち合わせはセントロ(市の中心部)の五月広場、中央に建つ塔が集合場所とした。12時集合だ。こちらは余裕をもって11時前に到着。この旅では集合時間に遅れると、理由はどうあれ、飯を1日分おごるという約束事を二人の間で作っている。さすがに早く着きすぎたので広場をふらふらしていると、11時半に山田がやってきた。

 荷物を転がしながら重い足取りでやってきた山田はヒゲ面で、疲労が色濃くにじんでいる。パタゴニアからバスで50時間近くかかったというから、それもうなずける。かなりお疲れのようだ。

 とりあえずビールで乾杯して旅の報告会をした。山田に話を聞くと、パタゴニアはかなりよかったみたい。氷河やペンギンもさることながら、地平線に広がる絶景に言葉を失ったと興奮しながら話してくる。まあ、そっちのほうは彼の日記を見てもらうことにして、とりあえず、何はともあれ宿に戻った。


久しぶりの山田君です。


街の中心をはしる5月9日通り。片側10車線の超大通りです。

 今日は夕方から、ブエノスアイレス在住の山田のおじさんと一緒に会食をすることになっている。山田さんは日本の総合商社に勤めて以来、スペイン、イラク、中国、チリなど海外勤務を続け、ここブエノスアイレスに来て2年半になるという。海外勤務は40年近くになり、山田も実際に会うのはこれが初めてらしい。

 6時半、聞いていた山田さんのオフィスにむかう。どんな人なのか、多少心配もあったのだが、山田さんはとても気さくな方で、僕たちのアルゼンチン訪問を心から喜んでくれた。そして驚いたことに、旅の情報やトラブル対策のレジュメを僕たちのためにあらかじめ作っておいてくれたのだ。

 自己紹介が終わり、すぐに食事に向かうものだと思っていたのだが、
「とりあえず、僕の車で市内をまわってみましょう」
 と、何も知らない僕らに観光案内をしてくれた。「このモニュメントはアルゼンチンが独立した際に……」「この劇場はアルゼンチンで知らない人がいないくらい……」と歴史もふまえて丁寧に説明してくれる。1時間ばかり車で市内を走ったあと、こちらの「肉を食いたい」という要望にあわせた店を選んで連れて行ってくれた。

 店の名前は「EL ESTABLO」。肉料理専門店だ。アルゼンチンの肉は美味い。そして安い。これはメンドサに入ったときから感じていたことだったが、その中でもここの肉はレベルが違った。山田さんが肉にあわせたワインをオーダーしてくれ、生ハムやタンのサイドメニューもつまみながらアルゼンチンの味を堪能した。
 あまりの美味さに顔が自然とほころぶ。昨日食った韓国焼肉がこの旅一番の美味さだったが、それをいとも簡単に抜かしてしまった。それもぶっちぎりで。

 山田さんの話がまた面白かった。山田さんはこれぞまさに文化人という方で、ミュージカル、映画、オペラ、タンゴ、乗馬と色々なことに興味を持ち、その素晴らしさを体感することを楽しみにしているという。

 「人間として生まれてきたからには、他の動物にできないことを何かしないとね。それは生きるためには直接関係ない、こういった余分なことだと思うんだけどね」

 こう言う山田さんは読書も趣味だという。僕が出版社に勤めていたことを伝えると、身をのりだしてきた。

「作家さんとのお付き合いはどうされているのですか?」
「本を作るというのはどういう作業なんですか?」

 矢継ぎ早に質問される。こればかりはさすがに僕でも話せるので、話は大いに盛り上がり、気が付いたときには12時前。あまりの楽しさに時間がたつのを忘れてしまった。


山田・ジェントルマン・純一郎さんです。


前菜の生ハムとタン。美味すぎてメインの肉は撮り忘れました。


 最後は車で宿まで送ってもらった。ブエノスアイレスにはあと3日滞在すると伝えると、それまでの間、自分の時間が空く限り、僕らに付き合ってくれるという。

「明日はちょっと仕事で無理ですけど、明後日は一緒にタンゴを見にいきましょう。で、その翌日の土曜日は僕も1日空いているので、車でどこでもご案内しますよ。それまでに行きたい場所を考えておいてください。こんな地球の裏側まで尋ねていただいて、ここでお会いできたんですもの。何も気にしないでいいですからね」

 こんなに至れり尽くせりでいいのだろうか。あまりのもてなしようにこちらも恐縮してしまう。
 まさに紳士。地球の裏側でこんな素敵な日本人に出会えるなんて。で、こんな豪勢な観光ができるなんて思ってもいなかった。山田に感謝しないとね。で、今回のブエノスアイレスはせっかくだから山田さんにお世話になっちゃおう。たぶんこれから先、こんなことはまずないだろうから。
 
author:tiger, category:Arzentina, 16:16
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