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プノンペンでのクリスマス
日本を出発してから339日目
ただいま38カ国目
カンボジアのプノンペンにいます



 今日は楽しかったホーチミンを離れ、カンボジアのプノンペンに移動する。

 カンボジアといえば、アンコールワット。それしか知らない。とりあえず、首都のプノンペンまで行って、そっからアンコールワットのあるシュムリアップまで移動しよう。何となくそう考えていた。
 そういえば今日はクリスマスだ。僕は仏教徒だし、ここは海外だし、本当にどうでもいいイベントなんだけど、クリスマスと聞くと何となく女性とラビリンスな夜を過ごしたくなる。
 あいにく僕にはそんな女性がいないので、今日は一人ぼっちのクリスマスになりそうだ。ここホーチミンはクリスマス一色といったかんじ盛り上がっている。今日移動するプノンペンはどうだろう? あんまり盛り上がっていなければいいのだけれど……。


今日の朝食はまたしてもフォー。


ホーチミンはクリスマス色が強かった。

 ホーチミンからプノンペンまではバスで12ドル。いつものように寝ながら移動してボーダーに着くと、出国・入国手続きがはじまった。
 出国手続きは問題なし。ところがボーダーを越えて入国手続きになるとちょっと困ったことが起きた。カンボジアに移動するので、ベトナムドンをぴったりを使い果たしていたのだけれど、何とこのカンボジア、入国ビザが必要らしい。
「そんなんあたりまえじゃん」と言われそうだが、アジアに来て気が抜けているので、そんなことにも気が回らなくなってしまっていた。

 やばいやばい、金がない。

 カンボジアについてからATMでおろす予定だったので、今財布のなかには50円くらいのベトナムドンしか入っていない。
 バス会社の兄ちゃんに事情を説明すると、簡単にお金を貸してくれた。更にボーダーを越えたところでとった昼食タイムでも、僕にお金がないことしってご馳走してくれた。いやいや、本当に親切な人がいて助かった。

 午後3時半、6時間半かけてバスはプノンペンに到着した。とりあえずATMに行ってお金を下ろしたのだけれど、ここのATM、現地通貨が出てこない。
 というのは、米ドルが力をもっていて、街中の売り買いには米ドルが頻繁に使われているからだ。ドル払いしたおつりはだいたい現地通貨(リエル)で返ってくるが、現地通貨がほしいときには、両替所で交換しなければならない。
 とりあえず立て替えてもらっていたビザ代を米ドルで支払い(ビザ代は20ドルだったけど、手数料込みで24ドル払わされた。このへんはシビア)、換金レートを確認してから宿さがしをすることにした。


トゥクトゥクのおっさんに安宿まで連れてってもらう。

 宿はすぐに見つかった。4ドルのシングルルームはいっぱいだったけれど、ツインの部屋なら5ドルでいいと言ってくれたので、面倒くさいしいいやと思いそこで決めてしまった。
 ホテル名は「キャピタル3」。キャピタル系列の安宿で、今日の朝までいたホーチミンの「キャピタルホテル」ともつながっているらしい。

 とりあえず荷物を置いて外にでる。ここのフロントのお姉さんは英語も上手く、本当に優しい。顔もなかなか美人だったので、駄目もとで今日の夕食に誘ってみた。

「えっ、今日!? そうねえ、たぶん大丈夫よ」

「おっ、いいの! それじゃ、7時に戻ってくるからよろしくね!」

 なんとも簡単にクリスマスの相手をゲットしてしまった。これで今日の夕食もさみしくないだろう。
 7時まではまだ2時間半くらいあったので、散歩しながら町を歩いた。途中で入った旅行会社でシュムリアップ行きのバスチケットも入手(10ドル)。セントラルマーケットはあいにく時間が遅くて、ほとんどの店が片付けをしている最中だった。
 

セントラルマーケット




 7時ちょうどに宿に帰ると、さっきのお姉ちゃんが僕を見つけて頭を下げてきた。

「ごめんなさい。今日、一緒に行けなくなっちゃった」

 何でも、家に電話をして今日は外で飯を食って帰ると告げたところ、母親に帰ってこいと言われたらしい。
 なんとも残念だ。これでまた一人ぼっちのクリスマスに戻ってしまった。
 仕方がないので、さっき歩いてきた道を引き返して繁華街へ戻る。街中はそれほどクリスマスで盛り上がっている様子はないが、ところどころではやはりクリスマスの飾りつけがほどこされている。

 ――今日は屋台で安飯を食いながらビールを飲んで一人メリークリスマスかな。

 そんなことを考えていると、トゥクトゥクの兄ちゃんが声をかけてきた。


「どこ行くの? 安いから乗ってきなよ」

「歩くからいいいい。すぐ近くだから」

「いい女の子いるよ。安くてかわいいよ。」

「いや、いらないって」

「それじゃ、ハッパはどう? 安いよ」

「金ないからいいよ。散歩してるだけだから」

 世界中でよく見かける客引き兄ちゃんだ。どう考えてもいかがわしい。お金はさっきおろしたのである程度あったけれど、財布に金を入れてついていくのは逆に危ない。そんな気分にもなれなかったので、いつもどおりに適当に相手をして立ち去った。

 とはいっても、行く場所はない。繁華街のレストランは値段も高く、日本料理屋もあったけど、そこにも入ろうという気にはなれなかった。もう少しローカルな場所の屋台のほうがいいかもしれない。
 適当に裏路地のほうに入って歩いていると、さっきのトゥクトゥクの兄ちゃんとまたばったり会ってしまった。

「おおっ! また会ったね。女の子はどう?」

「だからいらないって」

 相変わらず話の内容はこんな感じなのだけれど、この兄ちゃん、他のやつらと違ってそんなにしつこくない。英語はだいたい話せるので、明日まわろうと思っていた観光地などの行き方を聞き、微妙に仲良くなってしまった。
 彼もたぶんヒマなんだろう。ヒマ人同士なので、ちょっと親近感が生まれてきた。

「ところで、もうメシは食ったの?」

「まだ食ってないよ」

「じゃ、ごちそうするから一緒にメシ食いにいかない?」

「うん、行く行く!」

 おかしな展開になってしまった。トゥクトゥクの兄ちゃんと屋台で2人だけのクリスマス(いや、それ以上はもちろん何もないですよ)。

 彼の名はソックというらしい。酒を飲みながらプノンペンの話を聞いてみる。賃金の話、食事の話、生活の話……。およそクリスマスにする話ではなかったけれど、彼の身の上話に乗っていると、思わず肩をたたいて元気付けてやりたい気分になる。
 彼がトゥクトゥクで1日に稼ぐ賃金は15ドルくらい。そのうち3ドルは現在のガソリン高で飛んでしまうので12ドルくらいが手元に残る。地方から出稼ぎに来ているらしく、家は高くて借りられないのでトゥクトゥクの座席で毎夜野宿をしているらしい。
 大変だなあ。彼だけじゃない、彼くらい厳しい生活を強いられている労働者はたぶん多いのだろう。彼はまだマシなほうかもしれない。


これにビール3本つけて3ドルくらい。


トゥクトゥクの兄ちゃん、ソック。


ヒナの入ったゆで卵。


中身はこんなかんじ。



 2軒屋台をハシゴしてたらふく食い、酒もけっこうのんで酔っ払うと、彼とはすっかり仲良しになってしまった。帰りも宿までは歩いてすぐなのにトゥクトゥクで送ってくれ、明日の観光も安くまわってくれるという。
 僕の観光は気まぐれなので、それは断ったけれど、プノンペンに来て早々、現地人と打ち解けられたのはうれしかった。

 なかなかシブいクリスマスイブではあったけれど……。



author:tiger, category:Cambodia, 03:38
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プノンペンの小学校
日本を出発してから340日目
ただいま38カ国目
カンボジアのプノンペンにいます


 今日はプノンペンの市内を観光しよう。そう思っていたものの、どうにも気分が乗らない。簡単に言ってしまえば面倒くさかったのだ。

 10時に宿を出て近くの食堂で朝飯を食うと、とりあえずすぐ近くにある「ワット・コー」に行ってみた。ワット・コー自体はそれほどすごい寺院というわけではなかったけれど、寺院の裏側にまわってみると、小学校とつながっていた。


今日の朝食。


ワット・コー。




 小学校は一般人も自由に出入りできるみたいだ。僕が敷地内を勝手にまわって、子供たちと話していても誰からも注意を受けなかった。
 小学校の敷地内には文房具や食事を売っている売店があった。売店によっては大人に交じって児童が店番をやっているところもある。たしかにこの国では幼い子供たちも働かなければならないようだが、この売店も教育の一環で、当番制にして店番をしているのだろうか?






売店。

 学校の敷地内を1時間ばかし散歩して、教室を覗いたり出店で暇つぶしをしたりした。出会ったカンボジアの子供たちはみんな元気いっぱいだった。最近の日本の子供たちはどうなんだろう? これくらいの元気があるのだろうか? 気になる……。


今日の昼飯はお粥。このお粥は絶品だった。


この食いもんはなんだろう?


カンボジアもやっぱりバイクだらけ。バイクのスッテッカー屋は品数豊富。
 

 午後からはネットカフェにいって、ブログの更新。最初は1時間の予定で入ったネットカフェだったけれど、調子がよかったのでそのまま時間を忘れてブログを更新しつづけた。

 ――市内観光は明日すればいいか……。

 結局、市内観光をあとまわしにしてネットカフェに籠もり、店を出たのは夜中の11時だった。ということは10時間以上もパソコンの前に向かっていたことになる。
 1時間1500リエル(45円)だから10時間でも450円だけど、やりだしたら止まらないところは日本にいるとき同じだ。

 ネットカフェを出ると、さすがに10時間座りつづけていたので腰が痛い。尻も痛い。
 会社で働いていたときも同じような状況はよくあった。長時間労働で疲れてはいるのだけれど、達成感のほうが先にたって心地いいのだ。で、会社を出てそのあと向かった場所といえば「飲み屋」。これは夜中の12時だろうと、深夜3時だろうとかわらなかった。充実した仕事をした後は、ビールにかぎる。

 飲み屋は高いので行けないが、近くの屋台でビールを頼み、一人で「お疲れさま会」をすることにした。
 カンボジアは物価が安い。最近は高い店も増えているようだが、路地裏の屋台などは今でも3ドルあればビール2本、おつまみが4皿くらいは食べられる。
 今日は豪勢に4000リエル(120円)の海鮮焼きそばを頼んでみた。焼きそばをおつまみにビールを飲む。うーん、美味い!





 酔っ払って宿に帰り、結局寝たのは3時過ぎだった。明日の観光がさらに面倒くさくなってきた。どうしよう、やめちゃおうかな……。


かわいい子発見!


現在の宿。ツインで5ドル。
 



author:tiger, category:Cambodia, 02:09
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プノンペンを市内観光
日本を出発してから341日目
ただいま38カ国目
カンボジアのプノンペンにいます


 今日はプノンペン市内を観光した。めんどう臭かったのだけれど、昨日の夜に地図を見ると、主要な場所には歩いていけそうだったので、それならばと重い腰をあげたのだ。

 10時に宿を出るとまずは近くの屋台で腹ごしらえ。今日のメニューはベトナムで大変お世話になったフォー。値段は2000リエル(60円)で味はまあまあだった。





 腹が満たされると、とりあえず王宮に行ってみることにした。歩いて王宮を目指していると、右手に大きな百貨店が見えてきた。
 カンボジアには場違いな立派な建物で、化粧品や衣類のブランドも入っている。スーパーの日用品はまあまあ安いものの、他のブランド品はとうてい地元民には手の出ないものだろう。
 店内は閑散としていて、現地人らしき買い物客はほとんど見当たらなかった。たぶん近々潰れるだろう。ちなみに僕はここでタバコを購入。日本円で30円、40円くらいのものからあるので安くてよろしい。


百貨店。プノンペンにはなんかそぐわない。


カンボジアタバコ(これで45円くらい)。


 王宮にたどりついたのはお昼過ぎだった。建物をぐるっと回って聞いてみたのだけれど、今の時間は閉館時間で、午後2時からでないと見れないという。
 仕方ないので、王宮のすぐそばにある国立博物館に入り(入場料3ドル)、そのあとは川べりに出て時間をつぶした。国立博物館は外観はかっこよかったが、なかの展示物はイマイチ、入場料3ドルは高いなと思った。


外観はかなり立派。


このゾウ、お気に入りです。


館内にもいた。






 2時前になったので王宮にむかう。王宮は入場料が6ドルと高いが、金ピカの宮殿がいくつもあって、それなりに楽しい。なかでも、昔の人々の生活の様子が描かれた壁画は敷地内をぐるっと取り囲んでおり、ずっと見ていても飽きないかんじだった。
 ここは日本人観光客も多い。ほとんどがツアー御一行様だけれど、僕も含め、本当に日本人は写真を撮るのが好きだと実感させられた。














壁画。


 王宮を出ると、バイタクをつかまえて「ワット・プノン」まで1ドルで行ってもらった。
 ワット・プノンとは「丘の寺」という意味で、なるほど小高い丘の上に建っている。プノンペンという街の名の由来にもなったペン夫人がメコン川岸に流れ着いた流木の中の仏像を祀ったといわれる寺だ。
 一応寺には登ってみたけれど、面白かったのは下に象がいたことくらいで、これといって見るべきものはなかった気がする。
 入場料1ドルは外国人だけに適用されるものらしいが、入場口もいいかげんなので、知らん顔をして入ればたぶんタダで入れるだろう(僕は払ったけど)。












 この時点で午後4時すぎ。観光はもうこれくらいでいいだろう。
 このあとは自分の用事をすませていった。郵便局に行ってポストカードを出し、メガネ屋に行ってコンタクトレンズを買う。ここのメガネ屋は1ヶ月用のコンタクトレンズがなんと2・7ドル(300円)、これは安い。日本で買うのは高いので、旅後のためにもここで12個(6か月分)まとめ買いすることにした。

 最後はセントラルマーケットに足を運んだ。一昨日はすでに片付けにはいっている店が多く、あまりなかを回れなかったが、今日はなんとか間に合った。
 中央のえらそうな建物内には貴金属を中心とした高価なお土産がガラス張りのショーケースに入れられて並べられていた。
 ここはちょっと高価なのだけれど、その周囲を取り囲む店は交渉次第でかなり安く買い物ができる。東南アジアでは土産物を買うと決めていたので、さんざん店の売り子と値下げ交渉して、いくつかのお土産をゲットした。


美味そうなイカ焼き。




 今日1日はかなり活動的だった。
 疲れたので、お土産を宿に置きに戻り、近くの屋台で飯を食おうと歩いていると、一昨日会ったトゥクトゥクの兄ちゃん、ソックとばったり再会してしまった。
 彼もメシは食ってないらしい。というわけで、今日も僕のおごりで屋台に繰り出すことになった。
 プノンペンの夜も今日で最後。ソックともこれでお別れなので、屋台を何件かハシゴしながらビールを飲み、美味いカンボジア料理も教えてもらった。





 
 ソックはまたしても宿までトゥクトゥクで送ってくれた。もちろん飲酒運転だけど、これくらいなら大丈夫らしい。最後にハグして別れを言い、彼からもらった名刺を大事に財布にしまいこんだ。
 プノンペンにまた来るかはわからないけれど、もし来る機会があるとすれば、僕はトゥクトゥクの兄ちゃん、ソックに会うためにこの土地にくるだろう。彼のおかげで楽しい夜を過ごすことができた。

 ありがとう、ソック。元気でね。
 



 
author:tiger, category:Cambodia, 02:12
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アンコールワットを見にシュムリアップへ!
日本を出発してから342日目
ただいま38カ国目
カンボジアのシュムリアップにいます


 朝7時半のバスに乗り、シュムリアップへ向かう。シュムリアップに向かう目的はただ一つ、アンコールワットを見に行くことだ。


途中で通ったこの橋は「日本カンボジア友好橋」。日本が協力して作った橋らしい。

 世界中の数ある遺跡の中で、アンコールワットの評価は高い。僕自身、あまり遺跡に興味があるというわけではないので、どの遺跡に行くかはもっぱら旅人の口コミ情報に頼っている。
 旅人に聞いたなかで評価の高い遺跡ベスト3は、ペルーのマチュピチュ、エジプトのピラミッド、カンボジアのアンコールワットといったところだろうか。
 他によく出てくる遺跡はというと、エジプトのカルナック神殿、中国の万里の長城、ヨルダンのぺトラ遺跡、トルコのカッパドキア、ちょっと異質ではあるけれどチリのイースター島(モアイ)などだろうか。僕は個人的にグアテマラのティカル遺跡が気に入っているのだけれど……。

 とりあえず、アンコールワットは旅人に評判がいい。個人の嗜好で評価は違ってくるだろうけど、それほど人気のある遺跡なら、どのようなものか一度見に行っておかなければいけないだろう。
 

 バスは6時間かけて午後1時半にシュムリアップに到着した。バスターミナルの出口にはプラカードを持った客引き連中が大勢いて、金網にへばりつきながら乗客に自分の宿をアピールしている。
 シュムリアップには日本人宿「タケオハウス」があることは知っていたのだけれど、今回のアジア行では日本人宿には泊まらないでおこうと決めていた。特にアテがあったわけではないので、とりあえず安ければいいやと思い客引きに話を聞いてみると、最初に会った兄ちゃんが1ドルの宿を紹介してくれた。

 1ドル! 安い!

 これまで泊まった宿のなかで最安値だ。1ドルの部屋はドミトリーらしく、シングルルームもあって3ドルだという。3ドルなら全然オッケーなのでシングルルームに泊まるつもりでついていくことにした。
 宿は欧米人パッカーがよく利用するパッカー向けの安宿で、シングルルームと聞いていたのに通された部屋はツインルームでかなり広かった。これで3ドルならかなり安い。

 世界中を旅していて思うことだけれど、海外の宿は安い。もちろん国によって物価が違うので値段の上下はあるが、物価に対しての宿賃が日本と比べると格段に安いのだ。
 日本の倍の物価のロンドンでも1泊1900円だったし、日本より物価の高いヘルシンキにしても1泊の代金は2100円だった。
 東京のビジネスホテルが5000円以上、カプセルホテルが3000円以上することを考えれば、いかに東京の宿泊施設が高いかがわかるだろう。それだけ日本の地代は高い。


 部屋に荷物を置くと、とりあえずロビーに戻って受付でバンコク行きのバスチケットを聞いてみる。この宿まで迎えにきてくれて料金は12ドル。バンコクまでは12時間かかるので、悪くない値段だと思い3日後の30日で予約しておいた。カンボジアはアジアでも物価の安い国のようだ。

 ロビーには宿までトゥクトゥクで送ってくれた現地人のジョニーが僕の戻りを待っていた。アンコールワットを観光するのにはバイクが必要らしく、その役を自分がやるつもりらしい。
 アンコールワット自体はそこまで大きくはなくのだけれど、アンコールワットの周囲に無数に点在する遺跡もまとめてアンコールワット遺跡群と呼んでいる。すべてを回ろうと思うとかなり広範囲にわたり、とても1日では見きれないらしい。
 入場チケットは2種類あって、1日券が20ドル、2日〜3日券が40ドルする。せっかくだから3日かけてゆっくりまわってもよかったのだけれど、アンコールワットが絶対にいいという確信はなかったし、それほど遺跡に興味があるわけではなかったので、1日券で主だった遺跡をまわることにした。
 
 バイクの1日貸しきりをジョニーに頼むと、料金は20ドルだという。日本の物価で考えるとかなりお安い金額だが、もちろんその値段でオッケーすることはしない。向こうがぼろうとしてくることは承知しているので、ここからどれくらいまで値段を下げられるかのかけひきになってくる。
 面倒くさいといえば面倒くさいのだけれど、旅をしているうちにこのやりとりにも面白さを覚えてしまった。何事も楽しむこと。これは旅をしていて重要なことだと思う(でないとやってられない)。

 プノンペンで会ったトゥクトゥクの兄ちゃんソックは1日の収入がだいたい15ドルだと言っていた。遺跡までの往復の距離と遺跡間の距離を考えると、さほど遠くはない。僕が遺跡を見て回っている間は何もしないわけだから実質的な労働はわずかなはずだ。距離的に考えてもガソリン代はさほどかからないだろう。
 とりあえずまずは思い切り安い値段で切り出してみる。

「7ドルだったら頼んでもいいよ」

「7ドル! ちょっと待ってよ。それじゃいくらなんでも安すぎるよ。15ドルでどう? もうこれ以上まけられないよ」

(おっ、以外にすんなり15ドルまで下がった。これはもうちょいいけそうだ)

「わかった、それじゃ10ドル。もうこれ以上は払えない。10ドル以上だったら他の人を探すからいいよ」

「いや、15ドルでこちらは限界だよ。でもわかった、14ドルでいいよ」

「だから10ドルでないと頼まないって言ってるじゃない。いいよ、駄目なら。他を探すから」

「いや、ちょっと待って! わかった何とかする。13ドル!」

「もう……、10ドルって言ってるじゃない。わかったわかった、バイバーイ」

(立ち去ろうとする僕のTシャツをひっぱりながら)
「わかった。それじゃ、12ドルね。本当は10ドルにしてあげたいんだけど、アンコールワットの日の出を見たいんでしょ。そのためには朝5時過ぎにはここを出発しないと間に合わないよ。朝5時はつらいよ。頼むから12ドルでたのむよ」

「わかった。それじゃ、12ドルね。それでいいよ。そのかわり、明日の朝5時には必ずここで待ってるんだよ。1分でも遅れたらお金は一銭も払わないからね」

 こんなやりとりをしながら、結局12ドルで交渉はまとまった。もっと駄々をこねれば10ドルくらいにはなったかもしれないけれど、せっかくだから仲良く一緒にまわりたい。そのへんを考えるとこのあたりが頃合いだと思って折れることにした。
 名前がジョニーというのも気に入ったし……。(ジョニーは僕の一番好きなプロ野球選手で先ごろ引退したロッテ黒木知宏のニックネーム)

 ジョニーはこのあと宿の裏のグラウンドでサッカーをやるという。僕も誘われたのだけれど、多少疲れていたのと町を歩いてみたかったので断り、町を探索することにした。


カンボジアでもサッカーは人気。

 とりあえず向かったのはいつもどおり市場。この町はアンコールワットの観光客でもっている町で、土産物屋がいたるところにある。その中でも市内中心に位置するオールドマーケットは土産物屋の集合体だ。







 適当にまわって適当に売り子と話をし、とりあえず値段交渉をして土産物の相場を探る。いくつか気に入ったものを購入すると、近くの食堂で早めの夕飯を食って宿に戻った。



 明日は4時半起き。ちょっと早いけど、11時半には床について就寝することにした。アンコールワット……遺跡慣れ、感動慣れした僕を驚かせてくれるだけのものをもっているのだろうか。






author:tiger, category:Cambodia, 21:40
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アンコールワット遺跡群
日本を出発してから343日目
ただいま38カ国目
カンボジアのシュムリアップにいます


 4時半起床。待ち合わせの5時にフロントに降りていくと、ジョニーは眠たそうな目をこすりながら僕を待ってくれていた。

 いざ、アンコールワットへ!

 今日はトゥクトゥクではなくバイクで来ていたジョニーの後ろにまたがり、まだ真っ暗な道を風を切りながら北上していく。
うー、寒い。
 気合をいれて日の出のアンコールワットを見ようと思ったのをいくぶん後悔しながらも、バイクは料金所へ到着。20ドル払って1日券を購入しさらに北上すると、5分ほどでアンコールワットの入り口に到着した。

 真っ暗な足元を気にしながら遺跡の中へ入っていくと一直線に伸びた石道があり、そこを歩いて5分ほど進むと、湖のむこうに5本の塔が連なる、よく映像や写真で目にする遺跡の前にたどり着いた。これぞまさしくアンコールワットだ。
 湖のまわりには欧米人を中心に観光客はちらほらいた。それが時間がたつにつれ、湖の周りがいっぱいになるほど観光客が増え、気がつけば2重3重のとりまきになっていた。

 ここからは写真とともに日の出までを見てもらおう。












 朝日は遺跡の背中から昇ってくるので逆光になってしまう。朝日の美しさというよりは日の出とともに明るんでくる空と遺跡とのマッチングが見事だった。早起きしたことは無駄ではなかった。

 そのあとは遺跡の中に入り、広い敷地をぐるっと一周してみたけれど、やっぱりメインは日の出を見た正面からの景色だった。










 遺跡内をまわっていると、あっという間に2時間半経ってしまっていた。余談だが、この遺跡内にはトイレがない。あまり熱中しながら遺跡観光していると、あろうことか便意をもよおしてしまい、森の中に入って野○○をするなんてことが起こりかねない。
 遺跡は森で囲まれていて野○○をするにはもってこい。綺麗な空気をすいながら森に栄養をふりまく。そこからくる達成感と安堵感は確かに贅沢かもしれないが、さすがにそれはやめておこう。(ちなみに僕はそれを実行した人物を2人知っている)

 入場口に戻ると、ジョニーが待ってくれていた。そこからバイクで移動してアンコールワット以外の周辺の遺跡をまわる。アンコールワット遺跡群にはアンコールワット以外にも見所の多い遺跡が多い。
 南大門、バイヨン、タケウ、タプローム……。ここからは写真を中心に見ていってもらおう。


敷地内ではゾウに乗れる。



南大門。


こんなのがよくここまで残っていたと思う。



朝飯タイム



バイヨンに到着。


この壁画は今までみた壁画のなかでもトップレベル。


この顔、ええわあ。







バイヨンに来たということで、ちょっと1杯。


アンコールワットに来たということで、ついでに2杯目。



タケウへ来ました。


この遺跡はかなり急勾配で階段の幅がやたら狭い。


降りるときはこんなかんじ。



タプロームに到着。これが入り口。


敷地内で土産物売りの美少女発見!


タプロームといえば蔓。


鳥が建物の上に種を運んできたことから出来上がったとされている。でも、こんなん普通ありえない。



※このほかにも色々な遺跡に行ってみたけど、ここでは主だったものだけ紹介しときます。


 とりあえず行ってみたアンコールワット遺跡群。やっぱり他の旅人が言うように他の遺跡とはひと味ちがっていた。
 まず、規模のデカさ。僕のまわりきれなかった遺跡を含めると、そうとうの数の遺跡が狭い範囲に密集している。遺跡が森のなかでひっそりと佇んでいるのもいい。ちょっと観光客が過多なのが残念だけど……。
 そして、それぞれ違う見所。アンコールワットの景色、バイヨンの彫刻、タプロームの蔓などは他の遺跡ではお目にかかることのなかった新鮮なものだった。リピーターが何度いっても飽きないというのも分かる気がする。
 個人的にはバイヨンの石塔が気に入っている。アンコールワットの日の出もよかったけれど、このあたりは個人の趣味だと思う。どもれ甲乙つけがたい。

 観光が終了したのは午後1時半。暑さと眠さでぐったりして、帰りのバイクでは後ろに乗りながら眠ってしまった。いかんいかん、海外で交通事故なんて洒落にならない。

 宿に戻ってシャワーを浴び、仮眠したあとは今日も市場にくりだした。夜にはあまりに疲れたのでちょっと贅沢してマッサージ。1時間5ドルは日本と比べると格安だけれど、現地ではまあまあいい値段。途中から記憶がないけれど、おかげで身体は楽になった。

 シュムリアップには明日もう一日滞在する。特に観光する予定もないので、のんびり町でも歩いてみようと思う。案外これが僕の一番の旅の楽しみかもしれない。




author:tiger, category:Cambodia, 05:04
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ビール、ビール、ビール!
日本を出発してから344日目
ただいま38カ国目
カンボジアのシュムリアップにいます


 シュムリアップ3日目。今日は1日ヒマ。アンコールワットに行ってしまった観光客は何をすればいいのだろうか?

 何もすることがないときはとりあえず市場と決めている。3度目となるオールドマーケット探索では店の娘と値切り交渉を楽しみながらスカーフを3枚購入。時間をもてあましてネット屋でブログの更新をしていると、あろうことか、停電でネットがストップしてしまった。
 せっかく30分以上かけて書いていたブログがおじゃん。この地ではこんなことはよくあるらしく、店にいた客はまったく動揺することもなく店を出て行ってしまった。
 町中が停電なのに、表に出ても誰もあわてている様子はない。あわててブーたれているのは僕くらいのものだった。

 10分くらいで回復することもあるので、とりあえず表に出ていっぷく。店員と話をしていると、同じ宿に泊まっている日本人K君がたまたま通りかかった。彼もネット被害者らしい。しばらく話をしていたのだけれど、いっこうに電気が戻る気配がないので、2人と昼間からビールを飲みにいくことにした。
 やっぱり暑いアジア、食い物の美味いアジアはビールにかぎる。




セブンイレブンではなく、セブントゥエンテー。

 とりあえず安食堂に入ってビールを2本飲んでいると、またしても同じ宿の日本人Y君とばったり会った。3人でしばらくオールドマーケットを散策し、再び同じ安食堂に戻ってビールを3本飲む。
 あたりが暗くなってきたので3人でナイトマーケットにくりだし、宿に戻ってからは屋上のバーでまたビールを飲んだ。


オールドマーケット




こちらはナイトマーケットの前で演奏していた身体の不自由な人たち。


 これだけ読んでいたら、旅に出てビールばかり飲んでいるじゃないかと思われるかもしれない。確かにそうだ。でも、日本にいるときはこれより多い量のビールをしょっちゅう飲んでいた。たぶんこの旅で酒が弱くなっているはずだ。

 バーでビールを飲んでいると、よっぱらったチリ人のバックパッカーが話の中に入ってきて、しつこく日本人女性の口説き方を聞いてきた。どうして日本人女性は海外でモテるのだろう。
 男のほうも東南アジアではモテるらしいが、とりあえずいまのところそのような恩恵は授かっていない。明日から行くタイのバンコクは旅人の楽園らしい。これは楽しみだ。
 


author:tiger, category:Cambodia, 22:05
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