- アジア突入。まずは香港へ
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2007.12.08 Saturday日本を出発してから323日目
ただいま35カ国目
香港にいます
飛行機は午前7時40分に香港国際空港に到着した。
11ヶ月ぶりに帰ってきたアジア。めずらしく飛行機の中で眠れなかったので、いくぶん眠い。
空港から出るとバスに乗って、日本人宿「ゴダイゴゲストハウス」を目指す。
最後の大陸アジアはこの旅のしめくくり。とはいっても、学生や一般旅行者も多く訪れる東南アジアは治安もよく、物価も安い。正直を言って、「楽勝」気分はぬぐえない。
そんな気楽な気分でのアジア来訪だった。
宿もこれまでのように日本人の多く滞在する宿に泊まるのではなく、最後は一人で自分の旅を楽しもうと思っていた。それでも香港の宿をあえて日本人宿に泊まることにしたのには理由があった。
宿にバックパックを置かせてもらうことができるからだ。
ヨーロッパをまわったとき、ハンガリーの日本人宿にバックパックを置かせてもらい、デイバック一つで東欧を周遊したときは本当に身軽で楽ちんだった。最後のアジアも香港経由で日本に帰る予定なので、ここにいらないものは全て残して、身体も心も身軽になってアジアを楽しもうと思う。
宿はドミトリーで1泊80香港ドル(1200円)。ドミトリーにしては高いけれど、アジアの資料がまったくないので、情報収集ができるのはでかい。
9時すぎに宿につくと、2時間ほど仮眠をとって、11時には町の探索にでかけることにした。
町は看板だらけで、面白そうな店がひしめきあっている。僕がアジアが好きなのはこういう町並みだ。
そして、アジアといえばやはり「メシ」だ。この11ヶ月間、このアジアのメシは本当に楽しみだった。
とりあえず安そうな食堂を選んで入り、ワンタンメンを注文する。値段は18香港ドル(270円)だった。
なんということのない普通のワンタンメンなんだけれど、それが美味い。やはりアジアのメシは最高だ。
世界をまわっていて日本食が恋しくなると、中華を食いにいっていた。それでなぜか満足してしまう自分が不思議だったのだけれど、ここでワンタンメンを食ったときも同じだった。なんか「帰ってきた」感じがする。
これから東南アジアをまわっていくと、まだまだ美味いもんが食えるだろう。屋台のメシにビール。考えただけでヨダレがでてくる。
食堂から出て町を歩く。「せっかくアジアに入ったんだから、何か特別なことがしたいなあ」。なんとなくそんなことを考えながら歩いていたら美容院があったので、そのまま入って髪を切ってもらった。
料金は60香港ドル(900円)。ファッション雑誌のモデルを選んで、「こんな感じで」と言うと、店の兄ちゃんはすきバサミだけで、シャカシャカ髪を切っていき、30分ほどで完成した。
可もなし不可もなしという感じだったけれど、一応イメージは「香港スター」。これでアジアではモテモテだろう。
夕方からは屋台の並ぶとおりにくり出して、ビールを飲みながら一人でのんびりメシを食った。ここのメシも美味い。
夜中の10時頃にいったん宿に戻ったものの、それでも飽き足らず夜中12時には再び町にくりだした。
おつまみをちょっと頼んで、やはり一人でのんびりビールを飲む。これまでの旅のことを少し回想していると、「なんとかやっとアジアにたどり着けたなあ」と思えてきた。
あと1ヶ月、精一杯楽しもう。これまでどおり自分らしくね。
- 至れり尽くせりの香港
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2007.12.09 Sunday日本を出発してから324日目
ただいま35カ国目
香港にいます
香港という町は素晴らしい。これまでの旅でなかったものがすべてある。
食い物は中華を中心にバラエティにとんでいて、日本食屋も多く、交通の便も発達していて、行きたい場所にはすぐにいける。日用品も事欠かない。お土産、電化製品、雑貨、衣類……何でもある。
しかも、それが百貨店でなく小売店で売られているところが嬉しい(もちろん百貨店も充実している)。
今日は何をやったかというと、午前中に広州までのバスチケットを取って、あとはとりあえず色々食った。
昼飯は団子麺と豆乳。
こういう看板を勝手に作るのはやめましょう。
夕方ネットをしていると、同じ宿に泊まっている日本人カップルとたまたま会った。むこうも食事はまだだというので、3人で屋台にメシを食いにいった。
今日のメニューは鍋。これは一人ではなかなか頼めない。アジアは一人で旅しようと思っているけど、こと食事に関しては、やっぱり人数がいたほうが楽しい。それに、人数がいたほうが、いろんな種類が食える。
3人で鍋をたいらげてビールを飲んだあと、店を代えてさらにおつまみとビールを頼んで香港の夜を楽しんだ。
Y君とTちゃん。
実は今日、泥棒にあってしまった。
泥棒といっても、Tシャツを1枚盗まれただけなのだけれど、宿の前の廊下に干しておいたはずの黒いTシャツがなくなっていた。
管理人さんからは、たまにそういうのがあるので気をつけてくださいとは言われていたのだけれど、まあ衣類だからと気を抜いていた。
でも、よりによって、ミュンヘンのオクトーバーフェストで買ったTシャツを持っていきやがるとは。1番取られたくないTシャツだったのに……。
- 「深夜特急」は旅人志願者のバイブル
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2007.12.10 Monday日本を出発してから325日目
ただいま35カ国目
香港にいます
香港3日目。今日は香港島に行ってみることにした。宿から20分ほど歩いてフェリー乗り場に行くと、対岸には高層ビルの立ち並ぶ香港島が見える。
今日の朝飯。
香港は大陸側と香港島の2つに分かれているのだけれど、香港島の方が近代化されている。「香港島」といえば、沢木耕太郎の「深夜特急」を思い出してしまうのだが、彼が香港島に渡った30年前とはずいぶん変わっているはずだ。
ちなみに、僕はこの旅で「深夜特急」全6巻(新潮文庫)をバックパックに入れて持ってきていた。この本はバックパッカーのバイブルと言われ、僕も10年まえくらいに読んで感動した記憶がある。
今回は初バックパッカーの旅なので、せっかくだから旅をしながら、この名著を読み返してみようと思ったわけだ。
全6巻は旅を始めて3ヶ月くらいで読み終えてしまったのだけれど、再読した感想を言わせてもらうと、
はっきり言って、あんまり面白くない。
というのが正直なところだった。面白かったところといえば、1巻の香港・マカオ編と3巻のインドのブッダガヤくらい。
この紀行文のメインはマカオのカジノで大小をやっているときに「自分は金が無くなるか、嫌になるまで賭けつづけよう」と自白していた箇所だと思う。
昔読んだときは本当に面白かったのになあ……。
そう思いながら考えてみると、この「深夜特急」は旅人のバイブルではなく、旅人に憧れた旅人志願者のバイブルなのではないかと思えてきた。
「旅」というものに憧れを持つ人は多い。でも、実際に自分で旅をしてみると、それほどだいそれたことではないことが分かる。
旅に出る前は「沢木耕太郎はすごいなあ」と思っていたけれど、自分が旅に出てみると、「なんだ、俺でもやろうと思えばできるじゃん」という感じになってしまうのだ(実際には無理かもしれないけれど)。
たしかに彼が旅に出た30年前は今とは環境も状況もまったく違う。それ自体はたいしたことだと思うのだけれど、自分には絶対に無理かいうと、そうでもないように思えてくる。
実際、彼よりもすごい旅をしている人はいくらでもいる。それでも「深夜特急」がすごいのは、その旅をあの形でまとめあげた沢木耕太郎の筆力だろう。
彼は僕が一番尊敬するノンフィクション作家だ。最近はあまり惹かれる作品は出ていないけれど、彼はスポーツノンフィクションもすごいので、興味のある人は是非読んでいただきたい。
というわけで、話はそれてしまったけれど、30年前に彼の行った香港島に行ってみることにした。
フェリー代金は1・7香港ドル(25円)。景色を楽しむ時間もごくわずか、たった10分で香港島に到着した。
まずバスに乗って向かった場所は「SOGO」。管理人さんから、ここの書店には日本語ガイドブックがたくさんあると聞いていたからだ。
SOGOまでのバスからみえる町並みは、まさに近代化された香港だった。町の中心にはトラムが走り、両サイドには高層ビルが立ち並ぶ。SOGOは日本のものと寸分違わず、まるで日本にいるような感覚にさせられた。
デモをしてた。
あいにくお目当てのガイドブックはなく(値段も日本の1・5倍するので、どちみち買わなかったけど)、そこからトラムで商店街のほうに移動したのだけれど、あまりに何でもあるので、これまで物不足のアフリカにいた自分としては不思議な感じだった。
露店街で少し買い物をして、あとはぶらぶら街を歩くと、4時間ほどの滞在で大陸側に戻った。
香港島の沿岸は今でも埋め立て工事がさかんで、このままではいつの日か本土と島がひっついてしまうのではないかと思わせられるほど。この島はどこまで近代化していくのだろう。
大陸側に戻ると腹が減ったので、ショッピングモールの地下のレストラン街で日本食を久しぶりに食った。
メニューも日本語表示。本当はせっかくここまで我慢したんだから、日本食は日本に帰るまでは食わないで楽しみにとっておこうと思っていたのだけれど、
「九州ラーメン、ミニカレー付、コーラ付。32香港ドル(480円)」
のディスプレイを見て、すっかり心がときめいてしまった。
迷うことなくカウンターでチケットを買い、あっという間に完食。味はというと、たいしたことはなかったが、それでも久しぶりの日本の味に満足できた。
宿のドミトリーに戻ると、中国で1年半暮らしていたという日本人が入っていた。来年1年中国で暮らす予定だと話し、色々話を聞いたのだけれど、
「中国人は人間の皮をかぶったゴキブリですよ」
と言われて、少しショックを受けてしまった。1年半現地に住んだ人間がいうこの言葉。人それぞれだとは思うけど、大丈夫だろうか……。
今日の晩飯。
- 東南アジアをまわり再び香港へ
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2008.01.05 Saturday日本を出発してから351日目
ただいま39カ国目
香港にいます
今日はめずらしく朝早くに目が覚めた。毎晩遅くに宿に帰ってきて起こしてしまったフロントのおばちゃんに挨拶し、チェックアウト。とりあえず空港バスの時間を確認しにいき、郵便局でポストカードを出してから朝飯を食いにいった。
毎日食った屋台のシメに選んだのは煮込んだ肉かけご飯(25バーツ、75円)。屋台の料理はみんな美味かったけれど、ここのが一番お気に入りだ。おばちゃんも「また来たね」というかんじで笑顔をみせてくれた。
宿のおばちゃんにはお世話になった。
屋台のおばちゃんにもお世話になった。
時間があまったので土産物を見ながらカオサン通りを往復し、空港バスのでるバス停へ。料金は150バーツ(450円)だった。交通渋滞で空港に着いたのは予定より1時間遅れ、おまけにキャセイの係員が世界一周航空券を知らなかったのでカウンターでかなりもめたが、搭乗時間にはなんとか間に合った。
さらばバンコク!
香港には夕方6時半に到着。1ヶ月ぶりの香港はまだ2度目の訪問だというのに何となく安心できる。
今回も空港バスで市内にでたのだけれど、今回は前回と違って、日の落ちて暗くなった夜の香港を見ながらのバス移動。大都市香港の夜景は世界三大夜景といわれているだけあって綺麗だった。(ちなみに他の2つは函館とナポリ。函館は函館山で夜景を見ているのでいつかナポリにも行ってみたいなあ)
日本人宿「ゴダイゴゲストハウス」は1ヶ月たってお客もすべてかわっていた。無理をいって預かってもらった僕のバックパックもちゃんと保管してくれていて、前泊まった時と同じ部屋の同じベッドで旅の最後をしめくくることになった。
宿についたのは夜8時だったけれど、夜中の放浪癖はあいかわらずで、9時半には外へ。今日は前回とは別の露店街を練り歩き、いくつかお土産を買ったあと、ビールを飲んで12時半に宿に戻った。
旅もあと3日で終わる。香港の町は前回来たときに見ているから特別行きたい場所はない。せっかくだから旅の最後に何か面白いことしたいなあ。
今日の晩飯は牛肉ヌードル。
- いよいよ旅もあと3日。旅の最後に……
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2008.01.06 Sunday日本を出発してから352日目
ただいま39カ国目
香港にいます
あと3日でいよいよ僕の世界一周も終わる。去年の1月20日に成田を出発して南米から始まった旅もあと少しで1年が過ぎようとしている。
香港に到着し、あとは日本に帰るだけなのだけれど、せっかくなので最後に何か面白いことをして世界一周をしめくくりたい。……で、考えた。
題して、
「マカオで大小!沢木耕太郎に負けてたまるか!」
である。ご存知の方も多いと思うが、旅人のバイブルとされている沢木耕太郎の名著「深夜特急」の第一巻では、著者がマカオのカジノにいき、カジノゲーム「大小」にのめりこんでしまうくだりが描かれている。
僕はこの場面が「深夜特急」の肝だと考えており、他のどの場面よりも気に入っている。これこそが「旅」だとも思ったくらいだ。
時代も状況も違うけれど、同じ貧乏パッカー。金を惜しみなく使ってカジノを楽しむのではなく、金のない状況下でマカオのカジノに「ハマって」みたい。
現在の訪問国は特別行政区を含めて39カ国。国数には別にこだわっていないのだけれど、マカオに行けば全部で切りのよい40カ国になる。どうしようか考えていたのだけれど、今日の昼すぎに行くことを決定した。
香港からマカオまではフェリーで1時間。明日の午前中に香港を出て、夜中に帰ってくれば8日の日本帰国の便に間に合う。旅の最後がマカオのカジノというのも僕らしくていいではないか。そういえば、旅中に31歳の誕生日をむかえたのもラスベガスのカジノだった……。
というわけで、今日は午前中は宿でのんびりし、午後からは東南アジアをまわった荷物の片付け。いつでも帰れる準備を整えたあとでネットと屋台めぐりをして香港を楽しんだ。
屋台で一人、ビールを飲んでいると、どうしても旅の思い出がフィードバックしてきてしまう。
そういえば、旅を一緒にスタートした山田の馬鹿は今頃どこらへんをフラついているのだろう。5月にアメリカで別れて以来、音沙汰がない。たぶんアジアにいるはずだが、とりあえず生きてはいるのだろうか?
夜中12時半に宿に戻ると、50代の日本人男性が同じ部屋に泊まっていた。
「いや、最近になってこういう旅のやり方を知りましてね。すっかりハマってしまいましたよ。いや、旅って面白いですね。僕は正月休みを使ってせいぜい10日間の旅ですけど、それでも今自分にできるのはこれが精一杯なので、その中で楽しんでますよ。これだと費用も安く済みますしね。でもあなたを見ていると、本当にうらやましいです。僕もあと20歳若かったらなあ」
僕もこれから年をとっていく。いずれは仕事をしなくてはならないし、時間は限られたものになるだろう。40代50代になってもこういう貧乏パッカーをするかどうかは疑問だけれど、少なくともこの人のように貪欲に人生を送っていきたいなと思った。
ありふれた言葉ではあるけれど、人生一度きり、後悔のある人生は送りたくはない。
明日はマカオのカジノにチャレンジだ。久しぶりに興奮して今日はめずらしくベッドに横になってからも眠れなかった。
今日の夕飯はヌードル。
さらに晩飯は必勝祈願でバーベキューにビール!