- カードトラブルのプロ
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2007.10.06 Saturday日本を出発してから260日目
ただいま26カ国目
オーストリアのウィーンにいます
今日は朝からウィーンへ移動した。近くのスーパーに行ってパンを買って朝食をすませ、チェスキーの町へ別れをつげる。
またこの町に来ることはあるのだろうか。たぶんないとは思うけど、もしあったらすごくいいなと思う。(そしたら今度はこの町で絵をかいてやろう。すっごく下手くそな絵を)
今日の朝食
チェスキーからウィーンまでの移動は複雑だった。できるだけ安く行きたかったので、乗り換えだらけ。チェスキーからチェスケ・ブディヨヴィッツまで1時間バスに乗り、そこから列車で45分。わけのわからないところで降ろされてバスに乗り換え、山道を走ること20分、さらに別の路線まで行き、1両編成の列車に乗って10分(自分たちしか乗ってなかった)。そこで列車を乗り換えて2時間、午後4時にようやくウィーンまで辿りついた。
ウィーンでの宿探しには時間がかかった。僕は方向音痴だけれど、Nも負けずに方向音痴。方向音痴のいけないところは、自分が方向音痴だとわかっていながら、「たぶんこっちだろう」と適当に歩き出して、道に迷うまで地図をしっかり見ようとしないことだ。
今まではヒロシ先生をたよりにしていたのだけれど、今回はNも方向音痴。旅の先輩、そして人生の先輩としていいところを見せたかったのだけれど、結局1時間かかってようやく宿に到着した。
宿は「ホステル・ルーティンシュタイナー」。これはミュンヘンのビール祭りで一緒だったT君にすすめられた宿だ。一泊15ユーロ(2400円)と高かったが、ユーロ圏のウィーンは物価も高い。そのかわり宿自体はとてもきれいで廊下には絵画も飾ってある。キッチンもフリーで使いやすそうだった。
ここで一つ問題が起きた。宿代を払おうとATMにお金をおろしにいったのだけれど、NがどこのATMでおろそうとしてもお金がでてこないのだ。
いつも強気のNがめずらしく弱気になりかけているのはちょっと見ものであったのだけれど、正直、旅をしている間のカードトラブルはきつい。
いや、心配するなかれ。僕はカードトラブルのプロだ。「いやいや、そこ、自慢するところじゃないし」、というツッコミが入りそうだけれど、旅をはじめて1ヶ月で200万円スキミングされ、その後もいきなりのカード停止、銀行からの間違った引き落としなど、この旅では何度となくトラブルにみまわれている。(シティバンクさんのおかげでね)
これまで僕もいろいろな旅人に心配をかけ、何度も助けてもらった。今回は僕が助けねばと思い、ネットバンキングをしてみたり、緊急国際電話で連絡をとったりして、問題はなんとか解決した。
僕がそれほど役にたったわけではなかったけれど、スキミングされたのもカードトラブルがつづいたのも、それなりにいい経験ができたわけで、今日はこれまでの苦労がちょっと報われた気がした。
今日の教訓。「人生はなにごとも経験である」
今日の自炊スパゲティはめちゃめちゃ美味かったです。
- ウィーン少年合唱団の生声
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2007.10.07 Sunday日本を出発してから261日目
ただいま26カ国目
オーストリアのウィーンにいます
今日は朝から素晴らしい歌声を聴くことができた。
ウィーンといえば「ウィーン少年合唱団」。その生歌をなんとタダで聴くことができたのだ。
同じ宿に泊まっていた日本人と朝7時に宿を出て、電車に乗って王宮までいく。ここの修道院では毎週日曜日にミサがあり、そこでウィーン少年合唱団の歌声がきけるらしいのだ。
王宮
立ち見の席だとタダらしい。なんとかいい席をとろうと開門1時間前に並んでいると、主役が風格をただよわせて会場入りしてきた。うーん、なんとなく貫禄がある。
早く並んだ甲斐あって、海上では最高の席でミサと歌声を聴くことができた。
まだみんな小学生くらいなので、声が高い。そして男性とは思えない透き通った綺麗な歌声だ。ちょっとぞくぞくしながら聴いていると、本当に天使の歌声のように聴こえてくる。(というのはさすがに言いすぎか……)
ミサの間は最上階の席から見えない場所で歌っていたのだけれど、最後には我々の前に下りてきて歌ってくれた。さらにミサが終わると出待ちをして、少年たちと一緒に写真をとってもらった。これはいい記念になった。
日曜日にしかやらないことを知らないでウィーンまできた。それがぴったり日曜日、これはかなりラッキーだ。僕らを誘ってくれた同じ宿のYちゃん、T兄妹に感謝感謝。こういうことがあるから旅って面白いね。
そのあとはYちゃんとNと一緒にウィーン名物のジャンボカツレツを食べにいった。なんと一皿を3人でシェア。こんな礼儀知らずの貧乏パッカーたちに対しても、レストランの店員の人は嫌な顔ひとつせずに優しく対応してくれた。感謝感謝。
ジャンボカツレツ。
そのあとは3人別行動をして、夕方の4時にオペラ座の前で待ち合わせ、一緒にバレエ「ロミオとジュリエット」を観賞した。バレエ自体も質が高く、内容も少しわかっていたので、楽しい公演だった。(プリマはどうやらロシア人だったらしい)
国立オペラ座
ちなみに料金は7ユーロ(1100円)。これは一番安い席だけれど、庶民でも見れる安い値段の席を用意しておくというのは、劇場が庶民の文化にねざしたものになっているようでうらやましい。欧米の劇場文化に感謝感謝。
日本だとちょっと難しいかなあ。能、浪曲、歌舞伎……、すばらしい伝統芸能が若い世代に伝わりにくくなっている。それは値段だけの問題ではないと思うのだけれど……。
宿に戻ると、今日は3人で自炊することにした。ウィーンの町はちょっと問題があって、スーパーが早い時間に閉まってしまう。それも6時とか7時に。おまけに日曜日はどこのスーパーも閉店している。ウィーンはかなり都市なのに、こればかりは不思議で仕方が無い。休みはしっかり休むという生活文化なのだろうか。
結局今日は日曜日だったので、仕方なく近くの八百屋で高い食材をちょっとだけ買い、あとはもちまえの技術で自炊した。それでも品数を増やしたので結構豪華。3人で話をしながら自炊ディナーを楽しんだ。
- もうひとつの観光のかたち
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2007.10.08 Monday日本を出発してから262日目
ただいま26カ国目
オーストリアのウィーンにいます
今日は一日「公園デー」。緑の中でのんびり過ごした。
公園は好きで、日本にいるときもよくいっている。特になにをするでもなく、家族づれや子供たちが遊んでいるのを見ているだけなのだけれど、それがいい。
ただ、日本の公園はその敷地を精一杯利用して造られた印象もあって、子供から老人まで気軽にくつろげる空間になっているかというと、そうでもない気がする。
そういう意味でウィーンの公園はいつまでものんびりしていたい空間だった。芝生の上に腰を下ろし、パンを頬張る。牛乳を飲む。それがやたら美味くかんじる。
湖は葦などが群生してて水鳥などがたくさんいるし、木々も自然に生えている。規則正しく並べられて生えていないので好き勝手な場所を選んで腰を下ろし、湖の周りひとつとってもいくつもの場所を楽しめる。
公園のまわりにも高層ビルなどが建っていないので、景観をそこなわれることがない。特に二つ目にいったフォルクス公園はベンチが公園を囲むように並べられていて、自分がいいと思った景色を見ながらゆったりと腰掛けることができる。
もっと日本もベンチをたくさん置けばいいのに……。そう感じずにはいられなかった。
そのうちの一つのベンチに腰掛けると、Nがスケッチブックを出してきた。前に「僕も絵、描いてみたいなあ」。そう言ったのを覚えてくれていたみたいだ。
Nは今日の夕方の便でフランスに飛んでしまうので、最後にちょっとしたスケッチ大会。写生するのなんていつごろぶりだろう。
湖のまわりのベンチを選び、下手くそなりに熱中して描いていると、時間のたつのを忘れてしまう。突然、水鳥が大量に陸へあがってきた。何かと思えば、後ろでハトにえさをやっている人がいた。水鳥たちもそれを狙っていたのだ。
1時間ほどがあっという間にすぎ、下手くそな絵ができあがった。下手くそだけど、描くことが楽しくて仕方なかった。Nはさすがに上手い。同じ風景でこうまで違うかと才能のなさを感じていると、Nが描いた絵をちぎって僕にくれた。
絵をもらうのって、すごく嬉しい。僕も仕事でイラストレーターから何度かイラストをもらったことがあるが、いつも思う。絵をもらうって、なんでこんなに嬉しいんだろう。
その答えもわからないまま、僕も思わず自分の描いた下手くそな絵をNにプレゼントしてしまった。いつかまたその絵を見たとき、その下手さかげんで笑いながら僕のことを思い出してくれたらいいのだけれど……。
その町の名所をまわるのもいいけれど、こういうのって、違った形のすごく贅沢な観光だと思う。景色のいい場所で読書したり、お茶飲んだり、音楽聴いたり。列車に揺られながら物思いにふけったり。そしてやっぱり僕は観光嫌いなのかもしれないなと思ってしまうのだった。
Nが時間になったので、一度宿までもどり、途中の駅まで送っていった。Nとは6日間一緒だったが、いろいろな影響をくらわせられた。それを僕は「N菌」と名づけている。Nには何でも見透かされてそうで怖い。仕事のこと、旅のこと、これからの生き方のこと。N菌は容赦なく攻めてきて、僕を苦悩させる。
これまではずっとお気楽旅をつづけてきたのに……。今度日本で再会したとき、Nはどうなっているんだろうか? そして僕は……。N菌はこれからも先もしばらく僕を悩ませそうだ。
街ではこういう姿をよく目にする。やはり音楽の都だ。
Nを送ったあと、Yちゃんと待ち合わせをして楽友協会にウィーンフィルを聴きにいった。料金は立ち見席で4・5ユーロ(520円)だった。
ウィーンといえば音楽の都、その本場の演奏には期待していたのだけれど、期待をはるかに上回る演奏に鳥肌が立った。(これは誇張していない。本当に鳥肌が立ったのだ)
演目もベートーヴェンとシューベルトで知っている曲もあり聴きやすかった。クラシックのコンサートは日本でもよく行くのだけれど、そのレベルの差を感じずにはいられなかった。とにかくすごい。演奏、演奏者、指揮者、演奏会場、すべてに威厳があり、本場のすごさを実感できた。
楽友協会
帰り道はYちゃんと興奮しっぱなしだった。Nも大のクラシック好きでウィーンフィルは聴きたがっていた。あとちょっとウィーンにいられたらなあ。それだけが心残りだった。
- 悩みデー。
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2007.10.09 Tuesday日本を出発してから263日目
ただいま26カ国目
オーストリアのウィーンにいます
これからの旅をどうしよう。仕事をどうしよう。そんなことばかり考えていた1日だった。ウィーンは劇場と公園に行ったくらいで、まだほとんど観光していないというのに、まったく観光する気が起こらない。
とりあえず午前中は宿でのんびりして、昼から町にでかけたものの、「ピカソ・モネ展」を見に行って、そのあと公園でタバコを吸うと、あとは何もせずに宿に帰ってきてしまった。久しぶりに見たピカソはやっぱりよかったけれど、それも「裸婦と鳥とフルート奏者」の一点のみ。いまいち不完全燃焼だった。
宿に戻るとYちゃんが頭をかかえていた。これからのルートをどうしようか悩んでいるらしい。というか、ずっと悩んでいる。決めたかと思えばまた悩み、バス乗り場にチケットを買いに行ってからも1時間なやんでいた。
こりゃ、2人そろって「悩める人」だ。僕は普段かなり即決派なので、悩むことには慣れていない。仕事をしていてもさっさと自分のなかで答えをだしてすっきりさせるのに、今回のはかなり重症だ。
とりあえず、明日はYちゃんと一緒にプラハまで戻ることになった。こういう時にひとりでなかったのはよかったかもしれない。
夜中、酒好きのYちゃんとワインを飲んでいると、途中から世界一周中の日本人パッカーT君もくわわって旅話で盛り上がった。こういうのは楽だ。楽しいことだけ話していればいい。
仕事をやめて世界一周することも1週間もかからずに簡単に決めた。悩むことは苦手だ。でも、たまには悩まないといけないのかも。今がそのときかもしれない。
今日の一枚。こっちはマネキンまでスタイルがいい。