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レバノン入国
日本を出発してから213日目
ただいま17カ国目
レバノンのベイルートにいます


 本日はレバノン入国日。レバノンは内戦が今でもつづいていて、テロなども起きていることから危ないとされているが、いろいろな情報を聞くと、危ない区域にいかなければ大丈夫らしい。
 たぶん今行っておかなければもう行く機会はないだろう。せっかく中東にやってきたのだから、イスラエルにも行ったし、レバノンも行けるなら行っておこう。そう思ってレバノン行きを決定した。

 S君と韓国人のリーとともに宿を出る。ベイルートまではダマスカスからバスが出ており、国境を通過してそのままベイルートまで連れて行ってくれるらしい。
 レバノンビザは国境で取得できる。トランジットビザで入ればタダなのだけれど、制限時間が48時間と短い。
 最初はそれでもベイルートだけ行けばいいかと考えていたのだけれど、せっかく入国したのだから、もうちょっといようと5ドルだして15日ビザを取得した。
 
 午後2時半にはベイルートに到着。バスターミナルから歩いて宿をさがし、「ペンション・アルナズィ」というホステルにドミトリー7・5ドルで泊まることにした。
 本当は今日中にベイルートの町をまわろうと思っていたのだけれど、ヒロシ君情報では、この町はあまり見所がないらしい。そう聞いて重い足を持ち上げる余力は残っておらず、夕方まで宿で話をしていた。


戦争の痕跡はところどころに残っている。
 
 夕方、レバノンの郷土料理を食べようと、3人でちょっといい店にいって食事をした。全体的に味は濃いがその付け合せとして生の長ネギやカブがついている。カブを食べたとき、ちょっと日本を思い出した。





 食事の帰り、通りがかったバーに「サングリアデー」なる文字を見つけた。バーは高いのでこの旅中ほとんど入ったことはなかったのだけれど、この文字は酒好きの心をくすぐる。
 困ったことに、この旅一番の飲み仲間、S君も一緒にいるではないか。もうだめだ。飲むかー。
 
 宿に戻って少し休み、韓国人のリーとオーストリア人も連れて3人でバーに向かうことにした。久しぶりの高級な酒の味。酔いも早いがペースも速く、店を出るときにはすっかり酔っ払ってしまった。
 店を出ると向こうのほうにモスクがライトアップされている。これはなかなかいい眺め。酔い覚ましも兼ねて、そこまで散歩することになったのだが、酔い覚ましどころか、すっかり酒がまわってフラフラだった。



 海外でよっぱらえる。これも旅の醍醐味だ。

 なんて勝手なことを考えながら、もつれる足にカツを入れてなんとか宿にたどりついた。
author:tiger, category:Lebanon, 06:03
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ブシャーレという町を知っていますか?
日本を出発してから214日目
ただいま17カ国目
レバノンのブシャーレにいます


 今日はベイルートを出て、まずは北の町トリポリに向かった。S君とリーと一緒に出かけたのだが、2人は観光を終えたらベイルートに帰る。僕だけ次の町ブシャーレに移動するので、一人バックパックを持っての移動となった。

 トリポリに着き、バスターミナルかインフォメーションで荷物を預かってもらおうと思っていたのだが、レバノンはテロがあるため、簡単に荷物をあずかってもらえない(爆弾とか入ってるおそれがあるので)。仕方なくキャスターをだして、ひっぱりながら観光することにした。
 道がわからず困っていると、一人のレバノン人が親切に道を教えてくれた(この人とは後に再会する)。
 とりあえず有名とされているモスクに行ったのだけど、あいにくの工事中。スークをまわり、町をぶらついてみたのだけれど、特に見所もないので、1時間半ほどで移動することになった。












トリポリの町並みと子供たち。

 S君とはこれまで1ヶ月以上一緒にいたので、久しぶりに別れることになる。1人になるのも久しぶりなので多少の緊張感もあったのだが、逆に新鮮でもあり、次の町ブシャーレに期待を寄せながらバスに乗り込んだ。

 トリポリからブシャーレまではバスで1時間。Mちゃんに紹介してもらった宿の名刺をてがかりに道を聞いていくと、お目当ての宿「タイガーハウス」に到着した。
 宿に入ると、大柄な男性がこちらの顔を見て驚いている。

<あれっ、なんか見たことある気がする>

 驚いたことに、トリポリで道がわからず親切に説明してくれたレバノン人、彼こそがここの宿主トニーであった。今日の午前中、用があってトリポリに来ていたのだという。
 なんという偶然。この宿とは運命的なつながりがあるのかもしれない。

 とりあえず荷物を置き、「たぶん1泊で次の目的地に行くと思う」とトニーに告げた。
 というわけで、今日中にレバノン杉を見にいかなければならない。トニーに行き方を聞くと、10ドルでタクシーを貸し切れ、レバノン杉で1時間待っていてくれるという。10ドルは高いが他に宿泊客もおらず、時間もないのでお願いすることにした。

 タクシーで山道を登ること15分。町のを見下ろす位置にめざすレバノン杉はあった。レバノン杉はレバノンの象徴として国旗にもその絵がほどこされている。
 昔はこの町もレバノン杉に覆われていたのだが、たびかさなる内戦の影響でその総数は3000本にまで減少してしまったらしい。
 
 レバノン杉は日本の杉とは違って、枝がまるでまつ毛のように上向きにそりかえって伸びている。。
 一人で杉並木の中を歩いていると、ここが中東かと思えないほどの静けさと優しさを感じてしまう。あたたかいのだけれど暑いのではない。どちらかというと優しく包み込む感じのあたたかさだ。
 そのなかで空気を吸っていると身体にパワーをもらっている気がしてくる。内戦ですっかり減少してしまったレバノン杉だけれど、これがまた再び国中を覆うようになった時、レバノンに本当の平和が訪れるのではないかだろうか。国の象徴、国旗に飾られたレバノン杉をレバノン人はこれから大切にしてほしい。









 50分ほどで杉林を抜け、タクシーの運転手のもとに戻ったのだが、ちょっと土産物屋を見たくなり、もう15分ほど待ってもらうことにした。
 土産物屋で絵葉書を見ていると、優しそうな店のお姉さんが話しかけてきた。

「どれがいいの? 3枚で1ドルよ」
「この1枚だけ欲しいんだけど、いい?」
「うん、いいわ。この1枚はあなたにプレゼントする」

 ええっ、いいの!? なんていい人なんだろう。しかも美人。思わず軽くホレてしまいそうになった。

 町でも何人かのレバノン女性にあったのだが、レバノンはムスリムではないので、女性は肌を隠すこともなく普通の格好で生活している。
 顔立ちはヨーロッパ系なのだが、欧米人特有の少し冷たい視線が全く感じられない。みな優しい目をしている。これはアジアの地が混じっているからなのだろうか。
 スタイルもよく、みんな美人。そのくせ気さくな人が多いからすっかりレバノン人女性を気に入ってしまった。

 このあと行った土産物屋でもおじさんが絵葉書を1枚タダでくれた。僕は女性ではない。女の子に優しい現地人は何人かあってきたけれど、ここまでよくされたのは久しぶりだ。
 帰りのタクシーでは運転手がちょっと待っててくれと言って家に立ち寄り、お土産にリンゴを3個くれた。こんなことが中東であるなんて……。
 レバノン人って優しいなあ。しみじみとそう感じながら、すっかり気分をよくして宿に帰った。


運転手の家で栽培しているリンゴ。

 夕方にはメシ食いがてら、町を探索してみることにした。途中、商店のオヤジと気があって30分以上話をし、ネット屋に忘れた買い物袋を店員がわざわざ追いかけて渡しにきてくれた。さらにレバノン株急上昇だ。









 夜中にいったビリヤードとインターネットのあるバーでは多くのレバノン人に囲まれ、すっかり人気者になってしまった。

「日本語で自分の名前を書いてくれ」
「日本の歌を歌ってくれ」
「空手はやるのかい?」

 よほど日本人がめずらしのだろう。この小さい町に今いる日本人はたぶん僕一人。ちょっとした有名人だ。
 いつの間にか輪が広がり、後ろで次の順番をまっているのもいる。そのまた後ろのほうには、何か話したいけど入っていけない子供たちが何か話したそうな感じでこっちに視線を送っていた。







 仲良くなったバーの店員リタ(日本名は「理多」にした)が、いつまでここにいるのか聞いてきた。

「たぶん明日移動する」
「ええっ! もうちょっといてよ。明日の12時にここに来て。おいしいコーヒーをご馳走するから」

「……うん、わかった。明日もこの町にいるよ」

 というわけで、すっかり気に入ってしまったこの町にもう1日いることにしてしまった。
 12時半に宿に帰ると、トニーの奥さんが僕の帰りを待っていてくれた。
 テレビを見ると緊急ニュースでテロの映像が流れている。どこかの街の中心地で爆発が起こり、炎とともに黒ずんだ白煙が上空にわきあがっている。

「えっ、これ、レバノン!?」
「そうよ」
「ちょ、ちょっと待って!」

 慌てて地図を取り出し、場所を聞くと、テロのあったのはここからさほど離れていない北の国境付近の町だという。

「だ、大丈夫なの?」
「心配しなくてもいいのよ。こちらとは関係ないわ」

 でも……。
 こんな平和な町のすぐそばではテロが起こり、人命が失われているのだ。どうしてこんなことが起こるのだろう。ここにいるレバノン人はみんなこんなにいい人なのに……。
 ちょっと複雑な気持ちになりながら、でもこの町にこれた喜びをかみしめながら、もう一泊させてくれとお願いして眠りについた。


トニーの姪っ子。これで13歳。

 

 
 
author:tiger, category:Lebanon, 07:35
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シカラ少年との出会い
日本を出発してから215日目
ただいま17カ国目
レバノンのブシャーレにいます


 ブシャーレ2日目。今日は宿で朝食を食べたあと、ブシャーレの渓谷を見に行った。
 見に行ったといっても、下まで降りる元気はなかったので、途中まで。それでも眺めのよい場所で岩の上に座り、1時間ボケーっとしながら自然のなかに身をゆだねた。ここのところ中東を急ぎ足でかけあがってきた。こんなに時間の流れがゆるやかに感じられたのは久しぶりだ。







 正午。昨日の約束を守るべく、ビリヤードバーに足を運ぶ。理多ことリタは僕のくるのを待っていてくれた。美味しいコーヒー入れてもらい、そのあとは昼間からビールを飲む。うーん、なんて贅沢。









 バーのカウンターで話しこんでいると、昨日もいた少年がやってきて、一緒にビリヤードで勝負をしようと言ってきた。向こうは少年2人。2対1で勝負しようというのだ。

 よしきた、受けてたとう!

 周りにいた少年の一人がプレイに参加できず、こちらの応援にまわってくれた。彼もやりたそうだったので途中で一回打たせてあげると、しばらくしてペプシコーラを持ってきてくれた。
 無言で僕の前にペプシの缶を差し出す。

「えっ、これ、もらっていいの?」
「うん」

 まだ10才くらいの少年にジュースをおごられてしまった。
 これは応援してくれているこの少年のためにも、絶対に勝たないといけない。
 気合を入れなおしてプレイを再開したが、相手は少年とはいえかなりやりなれている。きっと、しょっちゅうここに来て遊んでいるんだろう。しかも向こうは2回連続で打てる。こちらは1回、かなり不利だ。
 それでもペプシ少年の応援もあって、なんとか接戦の末、勝負には勝つことができた。
(このへんは実に大人げない。が、そういう性格なので仕方がない)

 ビリヤードの勝負が終わると、一緒に勝負していた少年の一人が自分の家で一緒に昼飯を食わないかと誘ってきてくれた。
 絶対家の人には言っていないはずだ。でも、せっかくなのでおじゃましてみることにした。


手前がシカラ少年。

 彼の名はシカラ。まだ10才の少年だ。彼はビリヤードバーから歩いて5分の自宅に、喜びいさんで僕を案内してくれた。
 最初は緊張したものの、いきなりの東洋人の来訪者にも、彼の家族はとても親切に接してくれた。少年用に用意された昼飯では足りないと思い、すぐに卵料理を作ってくれ、コーヒーまで出してくれた。ほんと、この町の人は親切だ。





 食事のあとは屋上のテラスに上がり、家族といろいろなことを話した。
 日本のこと、僕の旅のこと、ブシャーレのこと……。シカラ少年は自分がつれてきた来訪者を家族に一生懸命に紹介し、家の中を案内してくれた。


テラスから見たブシャーレの町並み


お父さんとツーショット



 1時間半ほどおじゃましたあと、丁寧にお礼を言っていったん宿に戻る。部屋に入ると、見覚えのあるバックパックが横たわっていた。

 あれっ、S君!

 レバノンの南に行くといっていたのに、予定を1日早めてこの町にやってきたらしい。僕がこの町で唯一の日本人かと思っていたら、1日で2人に増えたわけだ。
 一緒に夕飯を食い、町を歩いたあと、さっきのビリヤードバーもう一度遊びにいくことにした。

 店に行くと、日本人が一人増え、さらに注目が集まった。人の輪が2つに増え、相変わらず「漢字で名前を書いてくれ」攻撃が始まる。
 後ろからつつかれて振り返ると、そこにはシカラ少年がいた。再会を喜びあうと、昼間彼の家で撮った写真をその店のパソコンに入れてあげた。
 シカラ少年の号令でみんなが集まり試写会がはじまった。
 彼のどうだと言わんばかりの満足気な顔。たった2日しかいなかったけど、この顔も今日限りかと思うと寂しくなる。

 2時間ほどいて、そろそろ帰ろうかということになり、お世話になったバーの店員や仲間にお別れを言って店をでた。シカラは外まで追いかけてきてくれ僕らの見送りをしてくれた。
 気がつくと目の前を通った車と止め、僕らを宿まで送ってあげてくれと頼んでいる。

「いいよいいよ、近いから。歩いて帰るよ」

 彼の気遣いに感謝し、ほっぺたを合わせて抱擁。お礼とお別れを言ってその場をあとにした。

 宿への坂をのぼっていると、後ろから声がする。振り返ると、シカラ少年が追いかけてきた。何かあったのかと待っていると、彼は僕の前に立ち、目の前にライターをひとつ差し出した。
 
「危ないからコレ使って!」

 よく見るとそのライターはお尻の部分から光が出るようになっている。それで暗い夜道を照らしていけと言っているらしかった。
 うそ! 10才の少年がここまでやってくれるのか。
 彼の気遣いを心の奥底まで感じ、もう一度抱擁してサヨナラを言った。

 帰り道、シカラ少年にもらったライターで道を照らしながら歩いていると、自然に涙が出そうになった。S君にバレないように無言で歩く。
 この町との出会い、あの店との出会い、シカラ少年との出会い。すべてが僕にとってあまりにも大きすぎる思い出だ。

 もう一日ここに居ようかな……。
 そう思ったけれど、これで出発したほうがいいなとも思った。あと何日いてもたぶん同じ気持ちになるだろうから。

 
 


 
author:tiger, category:Lebanon, 09:39
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