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南米童貞、一人感慨にふける
日本を出発してから2日目
ただいま1カ国目
チリのサンティアゴにいます


 成田を20日の19時に出発した便はアメリカのダラスを目指す。が、最初の目的地はアメリカではない。情熱の大陸、南米である。南米に直接行ける便がないため、ダラス経由なのだ。

 飛行機に揺られること10時間半(といっても、ほとんど寝ていた)。現地時間の20日15時半、無事アメリカのダラスに機体は着陸した。時差の関係で日本を出発した時間より早い。ちょっと得した気分にもなるけど、当たり前のことながら帰りは損する。というか、タバコも吸えない機内に10時間以上も押し込められているのだから、どうせなら、その時間ごとふっとばしていただきたい(自分でも言っていること理解不能)。

 アメリカには3回来たことがあるけれど、ダラスは初めて。といっても、経由で時間も中途半端なので空港内のみの滞在となる(最初に断っておくと、今回の旅、最初の国はアメリカではありません。経由地が最初の国というのは嫌なので)。

 とりあえず、急いでタバコの吸える場所を探す。ただでさえ飛行時間が長いのに、現在のアメリカは9・11のテロ以降、セキュリティーがめちゃめちゃ厳しい。目薬はダメ、シャンプーはダメ、髭剃りはダメとさんざん成田で尋問した上に(機内持込の話です)、本土に着いてからも何重にもチェックを受ける。

 やっとタバコが吸えると思って空港内をうろつくのだが、それらしい場所がない。

 仕方なく係りの人に聞くと、空港の外に出ないと吸えないらしい。寒い中、外で1本吸って空港内に入ろうとすると、また荷物と身体のセキュリティーチェックを受ける。

 そこまでしてタバコを吸わなくてもいいでしょ、と思われる嫌煙家のみなさん、誠にもってその通りでございます。でも吸いたいのでございます。
そういえば、同じように、タバコを吸うためだけに空港の外に出てきた人がいたが、皆、ライターを没収されていて、タバコはあっても火がない。たまたま見送りに来ていた老人がライターを持っていて、人気者になっていたのにはウケた。
 
 で、ようやく一息ついたあとで、大事な仕事にかかる。
 山田捜索だ。
 あわててネットカフェでメールを探す。が、空港内にネットカフェはないという。理由はよくわからんが、これもセキュリティー上の問題だろうか?

 何はともあれ、これで山田との連絡手段は無くなったわけだ(あとで気づいたのだが、国際電話をしようという考えはその時全く浮かばなかった)。あきらめてアメリカ定番のマックで夕食をとる。


ビックマックセット(5ドル30セント)。コーラはこれでレギュラーサイズ。

 ダラスを20日の21時20分に離陸した飛行機は最初の目的地、南米はチリのサンティアゴを目指す。チリといえば、チリワインとチリサーモンを思い浮かべるくらいで、特に印象はない(みなさん何かありますか?)。あるとすれば、あの細っそ長い国土くらい。

 離陸して10時間後、いよいよ飛行機はチリの首都サンティアゴに着陸。暑い。それはそう、南半球は今、夏なのだ。上着を腰に巻き、空港へ。

 着いたのは現地時間で21日の午前10時半だけど、結局日本をたってから26時間もたっている。あー疲れた。

 今回は入国審査も簡単に終わり、空港の外に出る。初めての南米の地は心地いい。空がいっぱいに広がっていて、遠くに見えるのが夏なのに白い衣をまとったアンデス山脈。勝手にこれが南米の空気だと決めつけて、思いっきり深く深呼吸する。うーん、満足。久しぶりに吸った1ミリのマイルドセブンで頭がクラクラし、さらに絶好調だ。


後方に薄っすらとアンデスが・・・


サンティアゴ空港の灰皿

 思う存分一人で感慨にふけっていたら、ひとつ大事なことを思い出した。
 山田だ。
 いつの間にか一人旅をしている気分になっていた(山田、ごめん)。
 空港内のネットカフェでホットメールを確認すると、来てる来てる、山田のメール。

 なんでも人身事故で電車が動かなくなり、慌てて車に乗ったら大渋滞、途中で電車に乗り換えて空港に向かったが、ぎりぎり間に合わなかったらしい。なんとか明日の同じ便でチリまで来れるという。そうかそうか、勝手に寝過ごしたとか思っててごめんね。

 とりあえず、明日空港に迎えに出るからというメールを残し(といっても、チリに来るまでメールは見られないんだけどね)、空港バスで市内に向かう。

 市内に着くと、まずは安宿街に。いくつかあたりはつけていて、最初に入ったとこの値段と部屋を見せてもらい、即OK。「レシデンシアル ロンドドレス」という安ホテルだ。バスが部屋についていなくて共同だったけど、部屋はなかなか小奇麗。シングルルームで一泊7000ペソ(日本円で1500円くらい)だった。最初はドミトリーにしようかと思っていたけど、最初だし疲れているからと簡単に予定を変更した。


ホテルの入り口、というより通用口っぽいけど。


ほぼベッドのみの部屋。でも天井が高い。なんかいい。

 すぐにシャワーを浴びて市内探索。市内の様子については明日にでも書くとして、夜中の10時頃、遅い夕食をホテルにほど近いジャンクフードの店でとった。最初は一人でビールを飲みながら南米に浸っていたが、じきに隣の席にいた現地の家族と仲良くなった。

 両親とおじさん、それに子供が2人だと思っていたら、どうもその子の親は別の人で夫婦だと思われた人も夫婦ではないらしい。スペイン語が通じず、ほとんどわからなかったけど、とにかく人の温もりに触れて楽しくなった。

 まだよくわかってないけれれど、チリの人は気さくで優しい。街もいい雰囲気。最初の異国の地で初日からいい思い出ができたと幸せな気分でホテルに戻れた。


さすが南米、みんなノリがいいぜ!
author:tiger, category:Chili, 14:26
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おのぼりさん、南米初上陸
日本を出発してから3日目
ただいま1カ国目
チリのサンティアゴにいます


 今日は一日遅れで山田がチリやってくる、はずだ。

 実は、予定では明日から山田と別れて行動することになっていた。僕はアンデス山脈を越えてアルゼンチンに入国、ワインで有名なメンドサという町を目指す。一方の山田はサンティアゴから南下、パタゴニア地方に入って氷河を見るという。

 これを逃すとしばらく会えなくなる。まあ、それはそれでいいのだけれど、一度は会っておいたほうがいいと思ったので、空港まで迎えに行くことにした。

 飛行場に着くと、昨日お世話になったタクシー運転手と偶然再会する。空港でATMを探している僕を見つけて親切に案内してくれ、タクシーではなくバスに乗るといったら、バス乗り場まで送ってくれた運転手だ。どうやらここを自分の仕事場にしているらしい。

 サンティアゴに着いてまだ1日だけれど、その間に7、8人の現地人に尋ね事をした。すると、その全員が親切に耳を傾けてくれ、自分でわからないことがあると、周りの人に聞いてくれる。スペイン語が全然わからない僕にも精一杯伝えようとしてくれる。自然こちらも顔がほころぶ。なかなかいい町だ、サンティアゴ。

 飛行機は定刻に着陸。しばらく待っていると、おのぼりさんが満面の笑顔でやってきた。

 山田「いやいやいや、まいったまいった」

 と言いながら、かなり嬉しそう。荷物をそこらへんに放り出し、タバコを取り出して火をつけると、飛行機に遅れたいきさつを身振り手振りで説明された。(というか、お前、なんでライター持ってんの? アメリカン航空は持ち込み禁止でしょ!)

 タバコを吸い終わったと思ったら、今度は「あっ、写真写真!」。おもむろにデジカメを取り出して、撮影会がスタートした。見ると、成田を出てからここまでで20枚以上写真を撮っている。そんなに撮る場所あったっけ……。

 山田を連れてバスでホテルに戻る。話を聞くと、成田から南米まで一人で来たことが、山田のなかでかなり良かったらしい。「一人旅の楽しさを知りましたよ!」と嬉しそうに話しているのだが、飛行機を乗り継いだだけで、まだ本格的な旅は始まっていませんから!

 ホテルは昨日と同じで、シングルルームからダブルルームに移動。一人あたりの宿泊料はダブルになっても変わらず7000ペソ(1500円)だった。

 部屋に入り荷物を置く。これは空港から気づいていたことだが、
 山田、荷物でか!

 僕がキャスター付きリュック(50リットル)と肩掛けデイバック(7リットル)を持ってきたのに対し、山田はキャスター付きリュック(70リットル)と肩掛けデイバック(7リットル)に加え、18リットルくらいのリュックサックももってきている。しかも、どれもがパンパンに膨れていて、やたら重い。

 おまえ、これ何が入ってるの? これ持ってこれから旅するつもり? かさばるパジャマが入っていたり、寝袋が入っていたり、飛行機用安眠枕に空気を入れるためのポンプが入っていたのにはさすがに吹き出してしまった。

 山田「いや、これでもバケツを持って行くのやめたらかなり楽になったんですよ」
 僕「…………」





山田の荷物。たぶん僕の倍近くある。


 荷物を置いて街中へ。しばらく歩行者天国を徘徊したあと昼飯に。遅れてきた詫びとして、山田にピザとラザニアをご馳走になる。

 昼飯のあとは、明日僕が向かうメンドサへのバスチケットを取りに、地下鉄に乗ってバスターミナルへ。暑い中さんざん歩いてそのターミナルを発見、明日10時のチケットを無事に入手できた。

 そのあとは近くの市場をまわり、地下鉄でホテルの最寄駅についたのが午後8時。8時なのに空がまだ明るいから、夕方4時とかそれくらいに思えてしまう。


ラザニア。迫力満点。


市場を探索。もっとでかい市場もあるらしい。


市場で変な服を発見。無視を楽しめ? 虫を楽しめ?


午後9時、サンティアゴの遅い夕暮れ


 夕飯はロケットみたいなでっかいビールを頼んで、二人で乾杯。これからの旅の成功を祈願した。

 さあ、明日からいよいよ別行動。自分のアンデス越えもすごく楽しみだけど、あのおのぼりさんがあの荷物を持って移動できるのか? 初の一人海外でどんな旅をしてくるのか? 楽しみで仕方ありません。


ロケット型ビールは飲み応え十分


歩行者天国でやっていた夜間の路上ライブ


やたらノリノリのおばさんに肩を抱かれた


出発の便に乗り遅れ、飛行機で26時間。さすがにお疲れの山田君です。

author:tiger, category:Chili, 14:28
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山田のバカが熱をだす
日本を出発してから36日目
ただいま3カ国目
チリのサンティアゴにいます


 早朝、バスで空港へ向かう。ブラジルともいよいよお別れだ。サルバドールの古めかしい建物が視界から後方へ流れていくと、ここの奴らに仲間がサイフを盗られたり、殴られたりしたというのに、不思議と愛しくなってしまう。


ブラジルならでは




これもブラジルならでは。こんな子、いっぱいいました。


 飛行機は途中降機1回を含むフライトで、15時40分にサンティアゴに到着した。山田とは離れた席に座ったのだが、空港に着いて会うと何かへんな感じだ。あの「おのぼりさん」に覇気がない。

 山田「風邪ひきました。リンパ腺が痛え」

 あらららら。「自分は葛根湯があるから大丈夫」「風邪とかはほとんどひかないので」と豪語していたのに、早くもやられてしまったらしい。

 これはやばい。こいつの風邪は性質が悪そうだから、気をつけないとこちらまで巻き添えを食ってしまいそうだ。とりあえず今日の宿はシングルルームにしなければ。
 
 というわけで、空港から旧市街に移動して宿探しをしたのだが、宿に着く前に山田とはぐれてしまった。2時間探しても見つからないので、いいかげん野たれ死んだのかと思ったのだが、ネット屋でメッセンジャーをしたらつかまった。何でももう宿に着いているらしい。で、熱が38度6分もあるという。

 これはますますやばい。僕も病気には強くて、ここ4年でまともに風邪をひいたのは1回だけ。東京に出てきてからの12年でも病気で医者に行ったのはたぶん2、3回(過労は何度かあり)くらいしかないのだが、ここは南米、用心にこしたことはない。とりあえず自分の風邪薬を山田に渡して、話も早々に一人夜のサンティアゴの街にくりだして行った。

 これを冷たいと思わないでいただきたい。
 両方が風邪をひいてしまってはどうしようもない。最悪、山田の熱がこのまま下がらないようなら、イースター島には僕だけで行こう。で、思いっきり楽しもう。

 これが野郎二人の地球一周なのです。



author:tiger, category:Chili, 17:49
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200万円スキミングされる
日本を出発してから37日目
ただいま3カ国目
チリのサンティアゴにいます


 困った……。困った困った困った。

 ちょっとやばいことが起きた。キャッシュカードから勝手に200万円が引き出されていた。

 本日、シティバンクのネットバンキングをしていてその事実が発覚。たぶんブラジルでスキミングされたのではないかと思う。カードは肌身離さず身に付けていたので、たぶんATMになんらかの仕掛けがしてあったのではないかと思うが、定かではない。
 
 何にもしてないのに200万なくなってしまった。このままでは旅もつづけられなくなる。困ったなあ。

 とりあえず急いで日本のシティバンクに国際電話して事情を話したら、こちらからの資料が届き次第、調査に入るとのことだ。全額返済の可能性もあるけれど、それにしても1ヶ月くらいはかかりそうな雰囲気だった。

 どうしよう。

 考えても仕方ないので、とりあえず、しばらくはこのまま旅を続けます。というわけで、今日はこのへんで勘弁させてください。
ケセラセラ………。
author:tiger, category:Chili, 17:51
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サンティアゴの中央市場
日本を出発してから38日目
ただいま3カ国目
チリのサンティアゴにいます


 昨日は湿っぽい日記になってしまいすみません。あまりいろいろ考えても仕方のないことなので、今日からとりあえず元気にやります。

 山田は相変わらず風邪であまり宿からでてこない。そのくせ宿の無料パソコンをずっとやっている。部屋でやる時間とあわせるとかなりの時間。1日何時間やっているのだろう。

 宿の近場をうろつくことはあっても、観光地に一度も一人でいっていない。それでいいようなことを言っていたのでいいのだろう。

 こっちなどはすでにネット屋に行くのも面倒くさくなっている始末。日記も最近は文量が減ってきた。でもつづいているだけいいか。(山田君、早く日記アップしようね)

 んなわけで、今日はネットをやっている山田を宿において、中央市場に行くことにした。中央市場は旧市街のアルマス広場から徒歩で10分くらいのところにある。チリはハンバーガーやポテト、ベーコンといったジャンクフードが多いので、そこにいって海鮮ものを食べようというのが狙いだ。

 市場にはやや疲れ果てた魚介類が並んでいる。見た目の鮮度はあやしいが、とりあえず、一つ一つがでかい。中には川魚のようなあやしげなのもいる。とりあえず市場内のレストランをひととおり周り、ちょっと汚めな店だったが、客が食べているものが美味そうだったので、そこに入った。




見た目はそんなに新鮮ではない。

 2000ペソ(450円)の海鮮鍋を頼んだのだが、タチ貝がメインのスープでとても美味しかった。これで450円は安い。ちなみにここのレストランの客引きをしているパブラという現地人と仲良くなった。こちらが日本人と知ると、左腕の袖をまくしあげて、自分のタトゥーを見せてきた。

 「バウリス・パブラ」とカタカナで彫られている。そして今度は「カンジ、カンジ」という。どうやら、自分の名前を漢字で書いてほしいらしい。南米では漢字やカタカナの人気が高く、自分の名前を日本の漢字にあててタトゥーを彫っている現地人は本当に多い。

 中には、とにかくかっこよさそうな漢字を意味もわからず適当に彫ってしまったという人もいる。旅仲間から聞いた話では、「台所」とタトゥーを彫った奴がいて、意味を聞いてきたので、「キッチン」と伝えたら、かなりヘコんでいたらしい。

 彼にとっては一生身体に残るものなので、ちょっと真面目に考えて、「波部楽」(パブラ)という名前を書いてあげると、かなり喜んでいた。


海鮮鍋。これはなかなかいける。

 夕方、多少調子のよくなった(というか、相変わらずネットをやっていた)山田を連れて、明日からのイースター島にそなえて買出しをすることにした。

 イースター島は孤島ということもあって、物価がやたら高いらしい。サンティアゴの倍くらいという噂だ。日本と一緒か、それより多少高いと思っていただければいいと思う。

 とりあえず、中国人のスーパー、現地のでかいスーパー、韓国人のスーパーと順にまわっていったのだが、最後の韓国人のスーパーがすごかった。日本のものがやたらある。それこそ、サンパウロの日本人街よりもこっちのほうが充実している。

 サッポロ一番、エースコックの焼きそば、冷麺、ソウメン、カラシ、ワサビ、日本米、レトルトカレーも売っていた。とりあえず目に付いたものを買い込んで、宿に戻った。

 イースター島では多分キャンプ場に寝泊りすることになるだろう。モアイ像も楽しみだけど、そこで日本食を自炊して食うのもかなり楽しみになってきた。


author:tiger, category:Chili, 17:53
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念願の地、イースター島へ
日本を出発してから39日目
ただいま3カ国目
チリのイースター島にいます


 今日はイースター島にわたる。
 シティバンクから送られてくるはずのファックスがなぜかまだ届かないが、仕方がないので本土を離れた。


サンティアゴ空港名物、トランクタワー。

 イースター島というのは別名ラパ・ヌイとも言われる、チリから約3800キロメートル離れた南太平洋の孤島である。島一周で60キロくらい。たくさんのモアイが島中にあるが、その意味や作られ方など、謎に包まれている部分が多い。

 実は僕、編集者をしているときにこの島を舞台にした小説を担当したことがある。イースター島とはなっていないが、現代人が無人島に漂流し、そこにはモアイが立っていたという設定だったので、この島については色々と調べた経験がある。

 著者である作家の方は最近亡くなられたが、登場人物や持ち物も含めて色々と提案を出させてもらえ、とても楽しかった仕事だった。死ぬまでに1度は訪れたいと思っていたので、念願叶って感無量だ。ここはひとつ、小説の主人公になったつもりで楽しもう。

 飛行機は約5時間かけてイースター島に到着した。空港につくと、そこからもう今までとは違う。平屋の小さな建物があるだけで、あとは滑走路と野っぱらだけ。空気も雰囲気も気候もまさに南国の島国の小島という感じだった。




念願のイースター島へ上陸

 空港には宿の客引きがきていて、すでに情報ノート(日本人宿などに置いてある)でチェックしていた「MIHINOA」というキャンピング宿に泊まることにした。

 宿主のロジェは働き者、奥さんのマルタは肝っ玉母さん、娘のミヒノアはこの宿の名前にもなった少女で7歳、まったく人見知りしない。日本人も多く宿泊していて、雰囲気はとてもいいかんじだった。


宿はこんなかんじ。テントと室内の部屋がある。


宿屋の娘・ミヒノア。

 とりあえず、初日はテントを借りて寝ることにした(1泊10ドル、1200円)。軽く米を炊いてレトルトカレーを食べる。久しぶりのカレーだったわりにはあまり美味くなかった。

 夕方6時くらいには港にマグロのカマをタダでもらいにいった。それを鍋で煮てみんなで夕食の準備を始めたあたりでフラフラしてきた。今日は朝からあまり調子がよくなかったのだが、どうやら山田の風邪がうつったらしい。

 ここ4年間で1回しか風邪をひいたことがなかったのだが、山田の風邪はさすがに性質が悪い。かなり熱っぽくなって、そのまま夕食も食べずにテントに入って寝てしまった。

 小説の主人公が早くも初日から熱を出して寝込んでしまった。うーん、小説っぽいといえば小説っぽい。イースター島はまだ4日ある。早く治して小説の現場を訪れなければ。


小さいボートでこのマグロ。カマはタダでもらえた。


author:tiger, category:Chili, 17:55
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マグロ祭り
日本を出発してから40日目
ただいま3カ国目
チリのイースター島にいます


 うーん。風邪が治らん。というか悪化してきた。普段風邪をひかない代わりに、ひいたらてこずることが多いので心配していたのだが、どうやら今回もそんなかんじだ。

 とりあえず、14時間くらい寝て9時半頃に目が覚めたのだけれど、喉が痛くて熱っぽい。少し歩いたらフラフラしたので、また寝ることにした。

 11時くらいに山田が起こしにきた。
「マグロ買ってきましたよ」

 イースター島へ来た日本人がマグロを1匹まるまる買うのは定番になっている。物価が高いイースター島にあって、マグロだけは日本で買うことを考えると格段に安い。今回はカマを取った1匹まるまる(10キロ)が40000ペソ(8800円)で買えた。6人でわけることになったので、一人あたり1500円で大量のマグロが食える。これはかなりお得だ。


自転車で南米を走行している魂のチャリダーがマグロを買ってきた

 誰もマグロのさばき手がいなかったので、僕が一人でさばくことになった。マグロ1匹など、もちろんさばいたことはなかったが、学生時代に居酒屋のバイトで秋刀魚をさばいたことがあり(かなりレベルが違うが)、一度、会社のビンゴ大会でもらった新巻ジャケをさばいたことがあったので、なんとかなるだろう。


ただいまタイガー、マグロと格闘中。

 で、まあなんとかなった。マグロが重いので少々てこずったけれど、小説の主人公らしく、病をおして巨大マグロと戦い、激戦の末に勝利を収めたとしておこう。

 マグロにはもちろん赤身、大トロ、中トロとあって、刺身にしてももちろん美味いし、ステーキにしたり、ネギトロにしたり、アボガドとまぜても美味かった。


昼食。刺身とズケがメインです。


夕食。ステーキ、ネギトロ、アボガド和えなど。

 が、激戦の末に更に病状は悪化、結局この日したことといえば、マグロを解体したことと、マグロを食っただけだった。一緒のパーティにいた日本人のみなさん、料理の準備もせずに寝ていてごめんなさい。

 明日はさすがに島を一周する予定。宿のマルタが咳をしている僕に気をつかって薬を出してくれた。これは効きそうだ。今日からテントでなくて屋根裏の2人部屋にうつったことだし(1泊12ドル、1440円)、しっかり寝て早く治そう。
 

この家の飼い犬、ウリ。

author:tiger, category:Chili, 18:00
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モアイ巡礼
日本を出発してから41日目
ただいま3カ国目
チリのイースター島にいます


 朝起きて外を散歩する。うん、なんか気分いい。昨日マルタにもらった薬が効いたんだろうか。夜中ぐっしょり汗をかいて目が覚め、着替えて寝たらすっきりした。とりあえず熱はさがったみたいなので、今日のイースター島一周はなんとかなりそうだ。

 まずは宿で車を借りる。24時間で25000ペソ(5500円)、セントロで借りるより安いので、ここで借りることにした。

 今回のメンバーは僕と山田と「ヒゲメガネ」(仮称)の3人で、1人あたり1800円ほどだった。
 本当は運転する気まんまんで、国際免許証も持っていたのだけれど、マニュアルだったので今回はやめることにした。
 運転手は山田だ。すぐ調子に乗った運転をするので心配だ。

 島は車で一周しても60キロほどだから、1日あれば余裕をもってまわれる。酒とお菓子をスーパーで補給して準備オッケー、時計と逆周りに海岸沿いを走っていくと、まず最初に発見したのが、「魂のチャリダー」だった。

 彼は今回、卒業旅行で南米を訪れ、チャリンコに乗って旅している。同じ関西人の「ヒゲメガネ」と時々漫才みたいなやりとりをしているのが面白い。

 ちなみに「ヒゲメガネ」も卒業旅行で南米に来ていて、とにかくやたらビールを飲む。朝でも昼でも関係なし。5年前写真が貼られたの学生証を見ると、まったく人相が違うのだが、彼曰く「ビールが変えた。ビールはおそろしい」らしい。


ヒゲメガネ(仮称)。

 チャリダーとともに最初の目的地、ラノ・ララクへ到着する。ここはモアイの切り出し場だったらしく、正座したモアイや顔から下が埋まったモアイ、ヒゲのモアイなどいろんなのがいた。ここだけで全部で397体のモアイがいるらしい。


前のめりになったモアイ


正座をしたモアイ


○○○○なモアイ


岩山から切り出し中のモアイ


下から見るとこんな感じ


ラノ・ララクはモアイだらけだった

 モアイを見終えて駐車場に戻ると、チャリダーのチャリがパンクしていた。この島の道路は舗装されていない道も多いので、なにかで穴があいたのだろうか。替えチューブをもっていたので特に問題はなかったが、さすがに疲れたらしい。しばらく一緒に動いたけれど、疲れて宿に帰っていってしまった。

 次のポイントはラノ・ララクのすぐ近くで、海の近くにある15体のモアイが立つアフ・トンガリキ。ここのモアイはチリ地震で損壊したモアイを日本が援助して復元したもので、15体が横並びに並んでいる様は壮観だ。

 写真を撮って休んでいると、むこうのほうから怒鳴り声が聞こえてきた。山田が16体目のモアイになろうとしてモアイの台座に登っているのを見つかったらしい。モアイの台座はモアイよりも崇高で、普通の人は登ってはいけない。一応、看板は出ていたのだが、それに気づかなかった山田がやらかしてしまったのだ。

 怒鳴り声の主は現地に住むおじさんで、めちゃくちゃ怒っている。何度も「サレー! サレー!」と言っている。サレーとは日本語でも「去れ!」の意味だ。

 山田君、軽率な行動は控えよう。でも、おじさんのあまりの怒りようと、山田の動揺には結構うけた。


日本が立てたモアイ


道には牛がいっぱい。


馬もいっぱい。

 そのあと北側のビーチのほうにまわって、ワインを飲み、風邪もちゃんと治っていないのに、沖のほうまで泳いでしまった。マル・デル・プラタに続き、この旅2度目の泳ぎだ。

 ビーチに観光客はほとんどいなかった。全部で20人くらいといったとこだろうか。というよりも、ここは島を一周していても、ほとんど観光客を見ない。イースター島というのは結構有名な観光地だと思っていたのだけれど、移動の不便さが影響しているのだろうか。観光客でも欧米人はお年寄りばかりで、若者の観光客は日本人くらいだった。

 時間もおしてきたので、最後にアフ・アビキのモアイを見て、今日は終わりにすることにした。ここのモアイは海を見つめて立つ7体のモアイだ。

 僕が担当した小説の中にも海を見つめて立つモアイが登場する。このモアイは物語の中で島の象徴となっていたので、ここのモアイだけは見ておきたかった。
 15体のモアイと比べると地味で、ちょっとさびしそう。でも、それがまたなんともいえないいい感じで、モアイの裏側から一緒に海を見ていると、物語の中に入っていけそうな気がした。(小説の内容については割愛します)


海を見つめて立つモアイ


山田を特別に8体目にしてあげました

 海辺で夕陽を見た後、宿に戻って夕食の準備。今日の夕食はマグロのハンバーグだった。これもかなり贅沢な一品だ。日本で食ったらいくらくらいするんだろう。
 明日は早く起きて、車で朝日を見に行くことにした。僕と山田、「ヒゲメガネ」に加え、「魂のチャリダー」、それから一緒にマグロをシェアした「エロサーファー」(仮称)も参加することになった。

 男5人。むさくるしいけど、まあ仕方ない。この日は酒を飲みながら、夜遅くまで下ネタで盛り上がった。




author:tiger, category:Chili, 18:05
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スクーターで島一周
日本を出発してから42日目
ただいま3カ国目
チリのイースター島にいます


 イースター島4日目。今日は早起きして車で朝日を見に行くことにした。

 寝坊した「エロサーファー」を除く4人で車に乗り込み、昨日行った15体のモアイがあった場所へ向かう。現地にはもう何組かの欧米人が来て日の出をまっていたが、時間になっても雲がかかっていて奇麗な朝日を見ることはできなかった。

(たぶん山田のせいだな。昨日、16体目のモアイになろうとして怒られたのがいけなかったのだろう)

 その後はオロンゴの火口に行ったり、女性のモアイを探しにいったりして、気が付いたらお昼前。レンタカーを返さないといけないので宿に帰った。


イースター島の夜明け

>
オロンゴ近くの小島


オロンゴの火口


この島はよく虹がかかる

 午後からは絵葉書を書いて郵便局に出しにいったり、みんなで談笑したりしていたが、隣のパーティのリサちゃんがスクーターを借りてモアイを見に行くというので、近くの手が4本あるモアイ像まで2ケツで連れて行ってもらうことにした。

 スクーターといってもでかいやつなので、十分2人乗りできる。風をきりながら車のいない道を走るのは本当に気持ちがいい。リサちゃんは大学の卒業旅行で世界をまわっているそうだが、原付を運転するのはかなり久しぶりらしい。そのわりには大胆な運転をしていて、後ろに乗っていて少しこわかった。

 4本手があるモアイはなかなか見つからなかったが、見つけてみると「なーんだ」というやつだった。ここで別れて歩いて帰ろうかと思ったのだけれど、思ったよりずっと宿から遠かったので、このまま2ケツをして島を一周することにした。

 昨日も来るまで一周したけれど、スクーターでの一周はまた違っていて面白い。おまけにちょうど夕暮れ時だったので、景色もすごい。


よくみると4本手があります。









 途中からは運転手もかわったのだが、僕の運転中、突然、道路上の馬がスクーターの前にたちはだかってきて、転倒してしまった。それほどスピードを出していなかったので僕は足の指を少しすりむいた程度、リサちゃんはパーカーが汚れた程度ですんでよかった。

 結局、4時間近くかかって島を一周したのだけれど、女の子と2ケツ、しかもイースター島の大自然の中という最高のシチュエーションで正直とても幸せだった。小説みたいにそこから愛が芽生えて……なんてことはなかったけどね。

 明日はいよいよこのイースター島を離れなければならない。あと1週間くらいのんびりしたいというのが正直なところだけれど、航空券がとってあるのでそうもいかない。残念だなあ……。惜しいなあ……。


最後の夕食はスパゲティ。左から、ヒゲメガネ、エロサーファー、山田、リナさん。


author:tiger, category:Chili, 18:13
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さらば、イースター島
日本を出発してから43日目
ただいま3カ国目
チリのイースター島にいます


 イースター島最終日。いよいよ今日で小説の舞台となったここイースター島ともお別れだ。この土地へも、もう2度とくることはないかもしれない。
 
 正直な感想をいうと、イースター島はすごーくよかった。今まで通ってきた国・都市とくらべて明らかに異色の地であったけれども、すべてがよかった。こんなところが地球上にあるんだと感動した。

 風邪をひいてて最初はどうなることかと思ったけれど、太平洋の孤島が癒してくれた。

 一緒に島をまわったり食事を作った仲間にも恵まれて、本当に楽しい5日間をすごすことができた。ヒゲメガネ、チャリダー、エロサーファー、リナさん、リサさん、宿のロジェ、マルタ、ミヒノアもよくしてくれたし、犬のウリにも世話になった。

 13時50分。飛行機が島を発つ。島との別れ、仲間との別れ、寂しくて仕方ない。ふだんこんなこと絶対言わないし、絶対書かないのだけれど、今回は特別に書いてしまおう。あー寂しい。あー寂しい。また来たいなあ、イースター。

 8時半にサンティアゴに着き、そこから荷物を預けている宿に戻る。明日からはスキミングで失った200万円をなんとかしなければならない。

 あー、面倒くさい。今日はとりあえずイースターの思い出にひたりながらいい夢を見よう。


さらば野郎ども。


飛行場の近くでデモをやってました。内容不明。




飛行場





author:tiger, category:Chili, 18:19
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